谷口吉生設計の美しい文化施設「鈴木大拙館」~金沢で有名な建物を見学しました、11

 

鈴木大拙館は、金沢の兼六園近くに建つ、世界的に有名な「鈴木大拙」氏の思想に出会える場所です。

また建築家「谷口吉生」さんが設計された、水庭のある素敵な建物です。

今回は、鈴木大拙館の魅力についてお伝えいたします。

鈴木大拙館の外観

1,鈴木大拙さんとは

 

鈴木大拙(すずきだいせつ)さんは、仏教哲学者で世界的に「禅」の思考を世界的に広めました。

海外ではD.T.Suzuki と呼ばれ、高く評価されています。

特にアップルの「スティーブ・ジョブス」は大学時代に、彼の「ZEN」の思考に出会い大きく影響を受けたと言われています。

ちなみに鈴木大拙さんは、金沢出身で、生家は、この文化施設のすぐそばあります。

鈴木大拙館パンフ

鈴木大拙館のパンフレットより

 

 

2、建物の概要

 

・周辺の環境~建物までは小径で繋がっている

 

建物は、金沢らしいきれいな緑の森の中にありました。

兼六園側から徒歩で行くと、都心近くなのに、森の中にいるような感覚になります。

金沢の辰巳用水分流

 

建物へは、石川県立美術館側の小さな滝が流れている辰巳用水分流を見ながら、少し開けた「美術の小径」「緑の小径」という細い曲がりくねった遊歩道を通ってゆきます。

鈴木大拙館の森

 

北海道の札幌では見ない竹林もありました。

そして、さらに進むと、コンクリートの塀にぶつかります。

鈴木大拙館のコンクリートの切れ間

 

そこに、人が通れるだけの切れ目があり、ちょっと覗いてみると水を張った浅いプールが、広がっていました。

鈴木大拙館の切れ間から見る池

 

間違って人の庭に迷い込んだ感覚で面白かったです。

そこから先は、コンクリートの塀の外側と内側を回って、建物のエントランスまで向かうようになっていました。

 

 

・鈴木大拙の言葉と環境を生かした設計に

 

鈴木大拙館の設計は、鈴木大拙の言葉「静か」「自然」「自由」にふさわしい環境と、「思索」「くつろぎ」「語らい」のが出来ることを目的としたそうです。

 

 

・3つの棟に分かれている。

 

鈴木大拙館は「玄関棟」「展示棟」「思索空間棟」の3つの棟が回廊で結ばれています。

またそれぞれの棟に「玄関の庭」「露地の庭」「水鏡の庭」と3つの庭があります。

これらを回遊することによって、鈴木大拙について知り、学び、そして考えることが出来るようなっています。

 

鈴木大拙館の間取り

・玄関棟はシンプル

 

玄関棟は、来館者の受付などの機能を持っており、周りの風景に合うようにシンプルな縦格子の外観になっています。

鈴木大拙館の玄関棟

鈴木大拙館の玄関棟側面

鈴木大拙の玄関棟のアプローチ

 

 

・玄関棟の内部と庭

 

玄関棟は受付を過ぎると、展示棟に続く回廊があります。

回廊は、鉄筋コンクリートの打ちっぱなしの壁とグレーに塗装された壁の飾りのない空間になっていました。

鈴木大拙の玄関棟の内部

 

玄関棟と展示棟の回廊の中間に「玄関の庭」見える場所があります。

鈴木大拙館の玄関の庭

 

 

・展示棟は落ち着いた空間

 

展示棟は最大規模を誇る建物で、鈴木大拙さんの書や写真、作品などが多く展示されています。

こちらの建物は「露地の庭」に面しており、書籍を読むことができる学習空間がありました。

こちらの棟は撮影禁止となっており、画像はありませんが、玄関棟と同じくシンプルで落ち着きのある空間になっていました。

鈴木大拙の展示棟

画像の奥が展示棟、右が玄関棟の外観。

 

・特長的な「水鏡の庭」と「思索空間棟」

 

展示棟を出ると、水を張った大きな人工池に、白い壁と大きく張り出した庇が特長の「思索空間棟」が建っています。

水鏡の庭と呼ばれるように、水に映った建物や緑が美しく見えるようになっていました。

鈴木大拙館の外観

とても、静寂のある落ち着いた雰囲気になっています。

鈴木大拙館の水鏡の庭から見た外観

静かな時間が流れていると、時々小さい音がして、水面に波紋が起きるようになっています。

「ちょっとした思考の変化のきっかけを」というメッセージのように感じられました。

鈴木大拙館の水鏡の庭

余談ですが、鈴木大拙館で感心したこと

 

ちょっとここからはマニアックなのですが、鈴木大拙館で感心したことがあります。

それはコンクリートの塀の作り方です。

鈴木大拙館のコンクリートの塀

 

コンクリートの塀を作ると、上部に水が溜まって、早く劣化してきます。

特に、北国では雪が載っている期間も長く、何もしないとボロボロになってきます。

鈴木大拙館のコンクリートの塀は、水が流れやすくするための溝があり、艶のある塗料で全体が美しく仕上げられていました。

我々も左官や塗料で劣化しないようには行うのですが、細かいところまで考えられているなと感心しました。

 




 
 

3,設計した谷口吉生さんとは

 

・金沢ゆかりの建築家

 

谷口吉生氏は1937年生まれで、金沢市出身の建築家、「谷口吉郎」さんの息子さんです。

まずは、お父さんのことについて。

 

・父「谷口吉郎」も有名な建築家

 

東京国立近代美術館本館や東京国立博物館「東洋館」、赤坂離宮迎賓館「和風別館」などを設計された建築家で、1973年には文化勲章を受章されています。
また、今では歴史ある街並みを守る「景観条例」が全国の都市にありますが、日本で初めて制定したのが金沢市で、これは谷口吉郎さんの働きかけによるものでした。
東京国立博物館東洋館

 

上の写真は、東京上野にある「東京国立博物館東洋館」。

下が、鈴木大拙館の近くにある石川県立美術館

石川県立美術館

 

 

・「谷口吉生」の設計の特長、主な作品

 

建築家「谷口吉生」さんは、鈴木大拙館のように、きれいな水平と垂直を生かしたデザインが特長です。

また、庭や周りの環境と建物を美しく調和させるのも特長かもしれません。

代表作に葛西臨海水族園、東京博物館「法隆寺宝物館」、豊田市美術館などなど数多くの作品があります。

下の画像は、東京上野にある 東京博物館「法隆寺宝物館」です。

東京国立博物館 法隆寺宝物館
鈴木大拙館の水鏡の庭と同じく、建物の前に水を張った浅いプール「人工池」があります。

東京博物館法隆寺宝物館の内部
内部は直線的な垂直と水平が美しい空間になっています。

 

 

・「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」

 

鈴木大拙館から1.5kmくらい離れた場所に「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」があります。

谷口吉郎さんの住居跡地に、谷口吉生さんが設計し2019年に開館しました。

谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館

 

残念ながら金沢に行った日は、展示替えの期間で休館中でした。

建築と都市をテーマとした施設で、館内には、吉郎さんが設計した迎賓館赤坂離宮和風別館「游心亭」の主和室と茶室が忠実に再現されいるそうです。

谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館のプレート

 

2024年12月に吉生さんは亡くなられました。

今月、金沢市でお別れの式があり、300人の方々が参列されたそうです。

 




 

4,最後に

 

・鈴木大拙館の所用時間など

見学の所要時間とすれば20,30分くらいでしょうか。

時間に余裕があれば、景色を見ながら1,2時間ゆっくりいろいろ思考してみるのも良いかもしれません。

場所が、石川県金沢市本多町3丁目4番20号になります。

ブログに書きましたが、石川県立美術館側から、自然豊かな「辰巳用水分流」の滝や、「美術の小径」らを通ってゆくルートがお勧めです。

鈴木大拙館を見学したブログを書いた設計士

 

 

・観光スポットとしてもおすすめ

 

禅というテーマを、簡潔にまとめあげたこの施設は、かなりの傑作ともいえます。

谷口吉生さんは、鈴木大拙館の設計が一番難しかったと過去にコメントを残されているくらい考えられている建物です。

建築の専門知識がなくても、谷口吉生さんのつくる空間が自然と心を整え、深い静寂に誘ってくれるのを実感できます。

金沢観光の際はぜひ、鈴木大拙館で“建築を通した静かな対話”を楽しんでみてください。

 

・今回の関連ブログも是非どうぞ!

 

・吉生さんが師事していた丹下健三さんの建物のブログ

子ども頃にカッコいいと思った建物「国立代々木体育館」 有名な建物を見学しました、5(東京編)
代国立代々木競技場内の代々木第一体育館と第二体育館は吊り構造の曲線カーブが美しい屋根の建物で、東京オリンピックの年に建築家の丹下健三が設計。ブログを書いてている設計士は東京の松任谷由実ユーミンのコンサートに行った際に見学し、テレビウルトラマンのジャミラ怪獣で見たエピソードも。北海道札幌の注文住宅の建築士の人気ブログ

 

・丹下健三の師匠「前川圀夫」さんのブログ

「迎賓館赤坂離宮」~住まいとして建築された東洋一の宮殿建築。有名な建物を見学しました、7(東京編)
東京の赤坂離宮迎賓館を見学し見どころを紹介。旧東宮御所で明治時代に天皇の宮殿として建築家片岡東熊がネオバロック様式の日本の名建築として設計。間取りは失敗だが地震対策し豪華な装飾と左右対称のデザイン、ベルサイユ宮殿と同じ噴水庭園も特徴。谷口吉郎、村野藤吾が改修し国宝に。北海道札幌の一戸建て注文住宅の人気設計士のブログ。

 

最後までお読みいただき感謝いたします。

今回のブログが、みなさまの住まいの参考になりましたなら幸いです。

あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせる家が建てられますように。

 

ここからCMです。

・ブログを書いている設計士の紹介

 

打ち合わせの様子

田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士

建築設計事務所「ライフホーム設計」代表

*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。

(建築実績100棟以上、現在も月に2,3棟の間取り設計に関わる)

貴方の想いをカタチに一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。

詳しいプロフィールはコチラ

 

 

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住まいる(スマイル)な住まいを作る一級建築士のご紹介「ライフホーム設計」の設計士の「田中昭臣」と申します。設計スタイルを押し付けることなく、お施主様との対話を重ねて、住みやすい家を造れるよう日々努力しています。簡単な自己紹介昭和38年(19…
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