西日本で最も多くの人が訪れた美術館「金沢21世紀美術館」。(2023年調べ)
ガラスで包まれた円形の建物は、美術館というより、公園のような気軽さ。
子ども連れの家族でも楽しめる、カジュアルな美術館を建築士がご紹介します。
1,金沢21世紀美術館は、周辺と調和するガラスの円形建築
金沢21世紀美術館は、兼六園のすぐそばにある透明な円形の建物です。
外観は一面ガラス張り、周囲の緑や街並みと調和し、公園の中にあるように感じられます。
4つのエントランス(玄関)があり、どこからでも自由に入れる開かれたデザイン。
特に兼六園に近い東口は広々としていて、訪れる人をやさしく迎える雰囲気があります。

兼六園に一番近い東口(本多通り口)は総合案内に一番近いエントランスになります。
建物の中央付近に4つの光庭があり、ガラス越しに自然光がやさしく降り注ぎます。
そのなかのひとつの光庭には、一番人気のアート作品「スイミング・プール」があります。

ちょうど行ったときに、熱心にプールを掃除されている係の方がいらっしゃいました。
2,庭と屋外アート~子どもたちの遊び場のような美術館
館内に入る前から、すでにアート体験は始まっています。
屋外の芝生や庭には、現代アートの展示が点在。
まるで遊具のようなアートに触れながら、アートと遊びが自然に交わる場所になっています。

実際に中に入れる展示物もあります。
美術館全体が町とつながり、誰もが自由に行き来できる空間になっています。
3,人気スポット「スイミング・プール」~水の中に人が?
館内の人気スポットのひとつが、「スイミング・プール」。
上から見ると普通のプールのように見えるのに、中には人が歩いている?という不思議な作品です。
地下の展示室と屋外をつなぐ構造によって、水と光の屈折が生み出す視覚的なトリックが体験できます。
きれいな水なので、美しさがわかりますね。
先ほどのスタッフさんに感謝ですね。
下から手を振ると上の人が手を振り返してくれます。
不思議な体験ですね。
4,設計は世界的建築家ユニット「SANAA」
この美術館を設計したのは、建築ユニット「SANAA(サナア)」。
妹島和世(せじまかずよ)さんと西沢立衛(にしざわ りゅうえ)さんの2人による世界的に活躍する建築家チームです。
彼らの建築は、「環境との連続」を大切にされています。
そのため「曲線」と「ガラス」を使用した開放的なデザインが多いのが特徴です。

ディオール表参道店
妹島さんは2010年、女性として初めて建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞。
西沢さんとのタッグでは、国内外で話題の建築を次々と生み出し、この美術館もその代表作のひとつになっています。

すみだ北斎美術館
5,館内:まるで散歩するようにアートに出会える空間
・金沢21世紀美術館のフロアマップ

赤のアンダーライン(展示室1~6)が有料ゾーン。Gの光庭にスイミングプールの展示がある。
建物内は、中央の4つの光庭を囲むように展示室やラウンジ、ミュージアムショップなどが配置されています。
・光庭は、美術館のアート作品に
光庭にあるアート展示物の「緑の橋」。
前述の「スイミングプール」同様、美術館も作品の一部になっています。
違う光庭からは、円形の展示室の屋根には「雲を測る男」の展示が見えます。
光庭には、美術館の一部が張り出された展示コーナーもありました。
見学した日は、小学生の団体見学が行われていました。
6,ガラスを多用した明るい館内
・開放的なガラスによる仕切り
壁ではなく、ガラスで仕切られた空間が多く、常に外の景色や他の来館者の気配が感じられ、空間が「生きている」ようです。

アートライブラリーの椅子「スワンチェア」
美術関係の資料が閲覧できる「アートライブラリー」
椅子もカラフルで個性的なデザインですね。(スワンチェアと呼ばれています。)
南口の玄関近くにある「アートライブラリー」の書庫スペース。
通路はガラスで仕切られているので、照明が無くても良さそうです。
ちなみに書庫スペースの向かいには、芸術的な形の絨毯(じゅうたん)が敷いてある情報ラウンジがあります。
・地下への階段室もガラスによる間仕切り
地下へ下りる階段室もガラスで囲われています。
地下も照明が無い状態でも明るそうです。
・展示室は自然光の「光天井」~2027年に改修予定
訪れた2025年6月の展示室の天井の様子。
本来は拡散するガラスを使った自然の光が入る「光天井」になっていました。
2024年の能登半島地震で一部が落下したため、すべて撤去されて下地(骨組み)が見える状態になっています。
そのため、2027年度は半年の間は休館して大規模改修するそうです
7,建築としての見どころ
・正円の揃った外観は、高低差のある展示室がアクセントに
建物全体が「円形」という大胆な設計ですが、それを感じさせないほどやさしく自然な構成。
また展示室の天井高さが大きく違うので、外観がリズム感があって楽しげです。
・柔らかな曲線のガラスがつなぐ外と内、人とアート
天井まである透明なガラスが、建物の内と外を繋いでいます。
長い木のベンチに腰掛けてのんびり外を眺めるのも良いかもしれません。
・個性的なラビットチェアー~設計者の作品
金沢21世紀美術館には、設計されたSANAAのデザインした椅子「ラビットチェア」があります。
ウサギの耳の形をした背もたれが特長的ですね。
8,まとめ
・誰でも楽しめる、新しい美術館のかたち
金沢21世紀美術館は、1980年以降の作品が中心になっています。
そのためアートに詳しくなくても楽しめる、美術館の「新しいかたち」を示した施設です。
ガラスの建築、円形の構造、屋外にも広がるアート、家族連れにも優しいつくり。
ここに来れば、美術館って難しい…という印象が変わるかもしれません。
気軽にアートを楽しみたい方、建築に興味がある方、子どもと一緒にお出かけしたい方へ、ぜひ一度足を運んでみてください。
・美術館の概要
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名称:金沢21世紀美術館(21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa)
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設計:SANAA(妹島和世+西沢立衛)
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開館:2004年
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アクセス:JR金沢駅からバス約15分「広坂・21世紀美術館」下車すぐ
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開館時間:展示内容による。公式サイトを確認
・見学のアドバイス~所要時間、予約など
- 所用時間は2時間程度かと思います。
時間が無ければ1時間でも楽しめます。
- 人気のスイミングプールは、事前予約がネットで出来ます。
予約のほうが予定がたてやすいかもしれません。
- レストランは地元の野菜を使った料理もあり美味しく、人気でもあります。
利用されたい場合は予約がお勧めです。

地元の食材を使ったパスタをいただきました。
館内は広く、歩くとのどが渇くで、ここで休憩するのも良いかもしれません。
ブログ「有名な建築を見学しました。」の金沢編は今回のパート3で終了です。
ご興味ございましたなら、パート1、パート2も合わせてお読みいただければと思います。
(1,2はすぐ下段にございます。)
・関連ブログも是非どうぞ!
・金沢編①、金沢ゆかりの建築家の傑作

・金沢編②、新しい図書館のスタイル

・丸みのあるガラスの美術館

・日本にある世界の3大近代建築家が設計した美術館

・日本の近代的な美術館のスタイル

・日本と欧米の間取りの違いは?

今回のブログが、みなさまの住まいの参考になりましたなら幸いです。
あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせる家が建てられますように。
ここからCMです。
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田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士
建築設計事務所「ライフホーム設計」代表
*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。
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貴方の想いをカタチに、一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。
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