家づくりでは、住んでから「もっとこうすればよかった」と後悔するケースがあります。
でも、しっかり図面を確認しておくことで、その多くは防ぐことができます。
今回のブログは、建築士の視点から「契約後の図面のチェックポイント」を中心にお伝えしたいと思います。

第1章、契約後の「工事用図面」からが、本当のチェック
(1)本当は「契約前のチェック」が理想
注文住宅で後悔しないためには、本来は契約前の段階で図面をしっかり確認することが理想です。
それは、契約後の大きな間取りの変更は、「追加費用が発生」、打ち合わせ時間や図面の書き直しで「工期が延びる」といったリスクがあるからです。
しかし現実には
- どのハウスメーカーや工務店にするか迷っている
- 資金計画やローンのことで頭がいっぱい
- 土地の契約手続きに追われる
など、契約前は落ち着いて間取りを見る余裕がないことも多いものです。
そのため、契約後の図面でチェックすることが大切になります。

(2)設計担当者も細かくチェックしきれない
以前(前回)のブログでお伝えしましたが、多くのハウスメーカーでは設計担当の人数が少ないため、細かく間取りをチェックしきれないことがあります。

契約した間取りでは大きく変更は難しいとはいえ、家づくりにおいてはご自身で図面を確認してゆくことが、失敗や後悔を防ぐ一番の対策になります。
(3)契約後の“詳細図面”でより生活をイメージできる
・工事用図面とは
契約後に作成される「工事用の詳細図面」は、実際に現場で建物をつくるための具体的な寸法が記載された正式な図面です。
・間取り図 (プラン図)は、詳細な「平面図」に
工事用の平面図には、
- 窓の大きさや高さ
→ 立った時・座った時の見える景色や採光がイメージしやすくなります。
- ドアの「どちら側に開くか」や「開いた時にどこまで動くか」
→ 家具を置いたときにぶつからないか、動線がスムーズかが分かります。
- 造作家具(食器棚・本棚など)を頼んだ場合、その実際のサイズ
→ 家事のしやすさや収納量が具体的にイメージできます。
といった、日常生活に影響する情報が細かく記載されます。
これにより、よりリアルに暮らしをイメージしやすくなります。

・コンセントや照明器具の位置がわかる「電気配線図」
平面図とは別に「スイッチの位置」「コンセントの位置」「照明器具の位置」などを示した 電気(配線)図 も作られます。
普段見る機会の少ない図面ですが、住み心地に大きく影響する、とても重要な資料です。
「ここに掃除機をさすコンセントがほしい」「寝室のスイッチは枕元の近くがいい」など、生活動作を細かく考えることができます。

平面図や電気図などの図面ができてくると、契約前には気づきにくかったポイントも見えてきます。
第2章,家具を図面に書き入れると失敗しない
(1)失敗しずらく、生活がイメージしやすくなる
工事用の詳しい図面が手元に届いたら、最初にやってほしいのが「家具を図面へ描き込む」作業 です。
本当は、契約前の間取りを検討する段階で家具を入れながら考えるのが理想です。
でも、まだ間に合います。
家具を書き込むと、もっと現実的に生活をイメージできます。

(2)家具は、書き込んだほうがイメージしやすくなる
部屋に置く予定の家具はできるだけ書き込む方が、住んでいるイメージがつかみやすく、よりよくなります。
「窓がテレビでふさがれる」「ドアが家具にぶつかる」「コンセントが家具の後ろになって使えない」など、図面上で自然に見えてきます。
頭の中で想像するよりもイメージしやすく、住み始めてからのトラブルを大きく減らすこともできます。

上の図のように、電気配線図に寝室のベッドを書き込んでみると、スイッチやコンセントが 2人それぞれにとって使いやすい位置かどうか が、ひと目で分かります。
・家具のリスト
主要な部屋の家具リストになります。
- リビング→「ソファ、テレビ、テーブル、リビングボード」
- ダイニング→「ダイニングテーブル、イス」
- キッチン→「冷蔵庫、冷凍庫、食器棚、レンジ台」
- 寝室→「ベッド、三面鏡、タンス、洋服入れ(プリーツケース)」
- お子様部屋「机、いす、ベット、本棚、タンス、おもちゃ入れ、洋服入れ(プリーツケース)」
- 和室→「仏壇、ひな人形」
- 洗面所→「洗濯機、乾燥機、ランドリー収納(カラーボックス)」
- 書斎、ホビールーム→「本棚、机、イス、パソコン関係(プリンターなど)、ピアノ」
新しく家具を購入する場合は、その寸法がわかればその大きさで書き込みます。
わからなければ、今お持ちの家具を目安にして書き入れます。
それが、今のものより大きなものであれば、少し大きめに書いてゆきます。

・ワンポイントアドバイス①、家具寸法の正確な測り方。
お持ちの家具を測るには、30cmくらいの物差しではなく、メジャー(コンベックス、巻き尺)を使いましょう。
定規だと誤差が出やすくなります。
百均でも3mくらいまで測れるメジャーが売っています。

・ワンポイントアドバイス②、家具の書入れは「三角スケール」が便利
図面に書き入れるには、物差しでも大丈夫ですが、三角スケールと呼ばれる縮尺ごとに長さのわかるものが売っているのでそれを利用する方が便利です。
平面図は50分の1という縮尺の図面ですが、計算して書き入れなくて済みます。
三角スケールも百均でも最近販売しているそうです。

三角スケールは建築業界では「さんすけ」と呼ばれています。
・ワンポイントアドバイス③、ハウスメーカーに依頼する
家具の測定や図面の書入れが難しければ、住宅会社に頼むのが良いかもしれません。
・設計者のつぶやき
大変だったら、主要な家具(太字)だけでもよいですよ。
完璧は目指さず、楽しく家づくりをするほうに重きを置いてくださいね。
第3章,契約後に見直したい3つチェックポイント
家具を書き込んでみると、ちょっと生活イメージがつかめたかと思います。
次のステップは 、窓・ドア・電気 の3つチェックしてゆきます。
この3つは、毎日の生活に大きくかかわってきますのでまず最初にチェックしてみます。
専門的な知識がなくても、「この家で生活しているイメージ」を思い浮かべながら見てください。
(1)チェックポイント、窓の位置・大きさ・高さ
工事用図面では、窓のサイズ(幅・高さ)だけでなく、床からどの高さに取り付けられるのか(取り付け位置)が記載されます。


・窓の3つのチェックポイント
①、家具でふさがれないていないか
本棚、タンスなど背の高い家具が窓にかかると、部屋が暗く感じられます。
②、採光・通風がきちんと確保できるか
部屋が暗くないか、換気できるかをチェックしてみましょう。
窓の大きさなどは、今の家の窓と比べるのが良いかと思います。
③、外からの視線が気にならないか
リビングの大きな窓が隣家の窓と向き合っていないか確認しておきましょう。

お互いの生活が丸見えになることも。
これらに当てはまった場合、窓の大きさや位置の調整が必要になります。
おまけ①、窓の注意~取り付け高さも重要
2階の窓の取り付け位置が、低すぎないかチェックが必要です。
取り付け位置が低すぎると、お子様の転落の危険性も高まります。

実際に完成後になってから「2階の窓が低い位置で危ないのでは」と相談したところ「大きな窓をご希望されたためです」と説明されたケースもありました。
希望を反映した結果でも、設計を専門で行っていないケースでは、安全面の検討が十分でないケースもあります。
そえゆえ、図面の段階でのチェックが大切です。

小さいお子様のいる家庭では、家具を足場にして窓に上るかもしれないので、窓近くに危険なものがないかチェックが必要です。
(2)チェックポイント、ドアの動きとぶつかりをチェック
図面には、ドアが開く方向(廊下側に開くなど)と、どこまで開くのか(可動範囲)が線で表示されています。
・ドアの3つのチェックポイント
①、家具を置いてもドアが開くか
ドアがベットなどの家具にぶつからないかチェックします。

②、部屋の照明スイッチが隠れないか
スイッチが、ドアの裏に隠れないかチェックします。
また入り口から離れた位置ないか見てみます。
スイッチ類の不便さは、毎日のストレスになります。
③、人にぶつかる危険性がないか
ドアが、廊下や洗面所などにいる人にぶつからないか確認します。

これらに当てはまっている場合は、ドアの開く向きを変えたり、引き戸などに変更したり、位置をずらすことを検討してみます。
おまけ②、ドアの注意~階段周りは特に注意
階段付近のドアは、開いた瞬間に転落につながる危険があります。
先日ご相談いただいた間取りでは、階段から上がってきた人に直接あたる配置になっていました。


階段の怪談でした。
おまけ③、「建具(たてぐ)」ってなに?
室内ドアは、建築用語で「内部建具(ないぶたてぐ)」、窓は「外部建具(がいぶたてぐ)」といいます。
現場監督が「建具(たてぐ)」と言ったらドアとか窓のことだと思ってください。
(私もついつい言ってしまいます。)
(3)チェックポイント、電気は「足りるか、使いやすいか」
電気図面ではコンセントの位置や口数(2口/3口/4口)や照明器具、そのスイッチの位置などが示されています。
・電気配線の3つのチェックポイント
①、家具やドアにスイッチやコンセントが隠れてしまわないか
②、コンセントは足りているか
③、照明が不足していないか(暗くないか)
「数が足りない」「ドアや家具が邪魔する」などがあると、住み始めてからの満足度に大きく影響します。

テレビ周りは多くのコンセントが必要です。
・主要な部屋の家電製品のリスト
リビングやキッチンなどは多くのコンセントが必要になります。
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- リビング(テレビ周り)→「テレビ、ゲーム機、録画機、ストリーミングデバイス(Google TV 、Fire TV Stick )、AV機器」など。
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- 書斎、子供部屋→「パソコン、プリンター、外付けハードディスク、ディスプレイ」など。
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- キッチン→「冷蔵庫、炊飯器、電子レンジ、トースター、コーヒーメーカー、フードプロセッサー」など。
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電子レンジなど、アース付きコンセントが必要ですので、家電の確認もお忘れずに。

・電気の注意①、タコ足配線の危険性
コンセントが足りないと、電源タップに頼ることになります。
たこ足配線は美観上を損なうだけでなく、過負荷による発熱で火災のリスクも高まります。

・電気の注意②、延長コードの危険性
数だけではなく必要な場所にコンセントがないと延長コードを使うしかありません。
失敗例として
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- 廊下や階段にコンセントがなくて、掃除機がかけられない
- ロボット掃除機の基地やコードレス式の掃除機置き場にコンセントがなくて充電できない
- 食卓まわりにコンセントがなくて、ホットプレートが使えない
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延長コードは、足が引っかかる転倒のリスクが高まるため、極力避けたいところです。

・電気の注意③、暗い照明の危険性
廊下や階段などが暗いとつまづいたり、転ぶ危険が増します。
特に高齢者のいる家庭ではチェックが必要になります。
電気配線は住んでからの不満が比較的多いので、何度も見直すことをお勧めします。
第4章、よりよくするには、プロにチェックしてもらう方法もある
図面に家具を書き入れて、窓やドア、電気配線をチェックできればだいぶ良くなったかと思います。
でもこれ以外にも見落としポイントは多くあります。
(1)間取りの失敗ランキング
住宅情報SUUMOが2020年に行ったアンケートでは、次のような「間取りの失敗ランキング」が紹介されています。
1位 広さの失敗 (43%)
2位 収納の失敗 (39%)
3位 配線の失敗 (37%)
4位 明るさ・温度・湿度の失敗 (35%)
5位 音・においの失敗 (20%)
6位 動線の失敗 (17%)
7位 視線の失敗( 8%)
SUUMO https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chumon/c_plan/madorinoshippai/
複数回答によるものだそうです。
これを見ると「窓、ドア、電気」以外も、失敗する要素がたくさんあることがわかります。
(2)「最適」「失敗」の判断は難しい
ランキング1位の広さの失敗の実例として、SUUMOでは「キッチンの作業スペースが狭かった」が例としてあげられています。
でも「調理するのにちょうどいい長さや通路が何cmなのか」を、図面を見ただけで判断するのは、初めて家を建てる人には難しいかと思います。

LIXIL https://www.lixil.co.jp/lineup/kitchen/
(3)キッチンのよくある失敗の実例
たとえば、対面キッチンでは
- 図面上は作業しやすいように見えた。
- 食器棚や冷蔵庫は問題なく置けた
にも関わらず、実際住んでみたら
- 家具の前が狭く扉や引き出しが全開できない。
- 冷蔵庫の扉の開き勝手が逆で使いづらい。
- 冷蔵庫が入らなかった。
といった失敗が出てくることがあります。

(4)気づきにくいポイントも
失敗ランキングではこのほか「収納」「明るさ・温度・湿度」「音、におい」「動線」などが並んでいました。
これ以外にも、図面を見ているだけでは気づかないポイントがたくさんあります。
- 「家具が大きくて、2階へ運べない」
- 「建物の配置を少しずらせば、隣の家の影を避けられた」
- 「冷蔵庫は動かしにくいため、コンセントの位置を高めにしておけばよかった」
- 「寝室でスマホを充電するために、ベットまわりにコンセントが必要だった」
といった点です。
こうしたことは、暮らしを想像しながら、時間をかけて図面をじっくり見ることで、はじめて見えてくることも多くあります。

(5)「自分たちだけで、進めるのが不安なときは」
・プロの視点を借りる
初めて家を建てる場合、施主ご自身の生活体験だけですべて気づくのは、とても大変かと思われます。
そこで「自分たちだけのチェックだけでは不安」と感じた場合は、「プロの視点」を少し借りるという選択もひとつの方法だと思います。
・住宅の設計士を探す
プロの視点を探す方法としては、
- 知り合いに設計士(できれば住宅の)に図面を見てもらう
- セカンドオピニオンサービスとして、間取りチェックを行っている設計事務所に相談する
という形です。

・今の間取りを、プロに良くしてもらうよう依頼する
契約後の図面チェックとして
- 全体的に失敗していないかのチェック
- 自分たちでは気づかない「こうすると良いですよ」というアドバイス
- 気になる点の相談
をしてもらうのが良いでしょう。
・設計事務所の選び方のヒント
ただし中には、間取りの「ダメ出し」や「間違い探し」が中心になって、かえって不安が大きくなるケースもあります。
契約後は、今の住宅メーカーとの関係を大切にしながら、「より良くするためのアドバイス」をしてくれる相手を選ぶことが大切です。
ホームページの雰囲気や電話応対などで、見極めていくのもひとつの判断材料になるかと思います。
ちなみに、このブログを書いている設計士も、全国対応で、契約後の図面チェックや間取りの相談も行っています。
「ちょっと図面を見てほしい」「第三者の意見も聞いてみたい」
そんなときの選択肢のひとつとして、ご活用いただければと思います。

第5章、まとめ、「契約後の図面チェックが、後悔しない家づくりを支えてくれる」
契約後は間取りそのものを大きく変えるのは難しくなります。
でも
- 家具の配置
- 窓やドアの開き方
- 電気のスイッチやコンセントの位置や数
- 使い勝手や安全性
などの、暮らしを左右する細かな部分はまだしっかり見直しが可能です。
そのため、契約後の詳細図面を丁寧に確認することは、
住み始めた後の「こんなはずじゃなかった…」を防ぐことになります。
ぜひ、家具を実寸で描き込みながら、必要に応じてプロの視点も取り入れて、
あなたのご家族にとって本当に「暮らしやすい家」にしていただければと思います。
今回のブログが、みなさまの住まいの参考になりましたなら幸いです。
あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせる家が建てられますように。
関連ブログも、是非どうぞ!
・契約後の間取り変更はいつまでに

・間取りのセカンドオピニオンサービスの具体例

・電気配線のチェック方法を詳しく

・家具が入らないことにならないように

・契約前に間取りチェックは大切

ここからは、私と設計事務所についてです。
・ブログを書いている設計士の紹介
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田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士
建築設計事務所「ライフホーム設計」代表
*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。
(建築実績100棟以上、現在も月に2,3棟の間取り設計に関わる)
貴方の想いをカタチに、一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。
詳しいプロフィールはコチラ
・北海道札幌の設計事務所「ライフホーム設計」のこと
・新築の間取りの設計
あなたの「思い」を「かたち」に「一緒に作る」注文住宅。
対話を大切し、住みやすい間取りのオシャレなデザイン住宅を作ります。
北海道の札幌市近郊のの一戸建て、新築、建て替えの平屋建て、二世帯住宅など注文住宅の間取りのお悩みは、「ライフホーム設計」で個別相談を!(初回相談は無料)
札幌市近郊(江別市、北広島市、恵庭市、千歳市など)は出張交通費無料です。

・間取りのセカンドオピニオンサービス
新規プランのほか、ご自分で書いた間取り、工務店やハウスメーカーの作成したプランへのアドバイスやサポート診断を行う間取りの駆け込み寺「セカンドオピニオンサービス」も行っております。(依頼の多い人気のサービス、電話メールオンラインで全国で対応中)
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