2026年8月1日、北海道大学の構内に「こども本の森 札幌・北大」という子ども向けの図書館がオープンしました。
設計は、世界的な建築家・安藤忠雄さんです。
今回は地元・札幌の建物を見て感じた印象を、写真と一緒にお伝えします。

1,こども本の森 札幌・北大とは
「こども本の森」は、安藤忠雄さんが自ら設計し、建設費も負担して寄付している子ども向けの図書館です。
大阪の中之島、岩手の遠野、神戸、熊本、松山に続いて、札幌は全国で6か所目の施設になります。

札幌の建物は北海道大学(以下、北大)に寄付され、札幌市と北大が協力して運営しています。
大学の構内に小中学生向けの図書館ができるのは、全国でも初めての試みだそうです。
玄関の表札のような銘板にも、北大と札幌市のロゴマークが入っていました。

2,曲線の大きなガラスが印象的な外観
外観でまず目を引くのが、曲線を描く大きなガラスと、丸いかたちの建物です。
大きなガラスを支える鉄骨造
曲線を描くガラスに覆われた、丸くて小さな建物で、外から見ても曲線を生かしたデザインがよく分かります。

この建物の構造は鉄骨造の平屋です。
※鉄骨造(てっこつぞう)とは、柱や梁(はり)などの骨組みを鉄骨でつくる建て方のことです。
鉄骨造は、細い柱でも建物をしっかり支えられるので、壁を少なくして大きな窓を設けやすいという特徴があります。
このように大きなガラスで建物を包むデザインには、向いている構造といえますね。

安藤忠雄さんといえば、「打ち放しコンクリート」(コンクリートを仕上げ材で覆わず、そのまま見せる仕上げ)のイメージが強い方も多いかもしれません。
ここでは、まわりの緑がよく見える環境を生かそうとしたのかもしれませんね。
まわりの環境 街側とキャンパス側で変わる印象
札幌駅に近い北大の門のそばに建っているため、入口の反対側には高い建物が並んでいます。
そちらから見ると、街の一角に建っている感じがします。

ところが、キャンパスの中から見ると、木々に囲まれて森の中に建っているような印象に変わります。
見る方向によって、ずいぶん表情が違いますね。

木々の中からこぼれる、ガラス越しの光
建物は北向きに建っていて、さらにまわりを木に囲まれているので、あたりは少し暗めに感じました。
そのぶん、ガラス面から明るい光がふわっと漏れていて、とても印象的でした。
暗い森の中に、灯りのともった小屋があるような雰囲気かもしれません。

ドングリの落ちるアプローチとデッキ

玄関までは、木の床のアプローチと階段でつながっています。
※アプローチとは、道路や敷地の入口から玄関までの通路のことです。
建物のまわりも木の床でぐるりとつながっていて、一部はデッキのようになっていました。

アプローチを歩いていると、ちょうど目の前にドングリがコロンと落ちてきました。

近くにドングリの木があるようで、建物のまわりはドングリだらけ。
秋らしい出迎えに、思わず足元を見ながら歩いてしまいました。

3,入口で出迎えるメッセージとおすすめの本
設計者・安藤忠雄さんについて
安藤忠雄さんは、1941年大阪生まれの建築家です。
大学で建築を学ばず、独学で1級建築士の資格を取り、1969年に設計事務所を開きました。
若いころはプロボクサーだったという、ちょっと珍しい経歴の持ち主です。

1995年には「建築界のノーベル賞」ともいわれるプリツカー賞を受賞し、今では世界で最も有名な建築家の一人です。
代表作には、大阪の「住吉の長屋」や「光の教会」、香川県直島の「地中美術館」などがあります。
安藤さんの作品は、これまでにもブログで紹介しています。よろしければ、こちらもどうぞ。

同じ札幌にある安藤忠雄さんの作品で観光スポットにもなっている「頭大仏」
安藤忠雄さんからのメッセージ
館内に入ると、入口近くの本棚に安藤忠雄さんの手書きと思われるメッセージのプレートが飾られていました。

北大の前身・札幌農学校のクラーク博士の言葉「ボーイズ・ビー・アンビシャス(少年よ大志を抱け)」とともに、一冊の本と出会った子どもたちが力強く成長し、北海道から羽ばたいてほしい、という願いがつづられています。
北大の構内に建つ図書館らしいメッセージですね。

名誉館長ヤマザキマリさんのおすすめの本
同じく入口付近の本棚には、名誉館長のヤマザキマリさんのおすすめの本を集めたコーナーもありました。
ヤマザキマリさんは『テルマエ・ロマエ』で知られる漫画家で、北大でイタリア語の講師をされていたこともあるそうです。

4,館内 曲線の本棚がつくる「本の森」
外観の丸いかたちを生かした本棚

館内では、外観の丸いかたちを生かした曲線の本棚が、ぐるりとつながっています。

円柱形の本棚の中に、くつろげる小部屋
館内には、円柱形の本棚が5つあります。


そのうち4つは、円柱の内側が小部屋のような空間になっています。
靴を脱いで上がれるようになっていて、子どもたちがのびのびとくつろげる場所になっていました。
本棚に囲まれた「自分だけの秘密基地」のようで、子どもは喜びそうですね。

外を眺めながら読めるカウンター席
曲線のガラスに沿って、カウンター机が設けられています。
外の木々を眺めながら、ゆっくり本を読むことができます。

通路のところどころにも椅子が置かれていて、気になった本をその場で座って読めるようになっていました。

小さな子ども向けのコーナー
館内には「小さなこどもたち」のコーナーもあります。
子どもの手が届く高さに本が並んでいて、小さな椅子も置かれていました。

天井まで届く本棚と、少しの圧迫感
ガラスに面した本棚は低めにつくられていますが、内側の本棚は天井まで届く高さがあります。
一緒に行った人は、「ちょっと圧迫感がある」と話していました。
本棚が天井に向かって少しせり出すようなかたちになっているのも、影響しているかもしれません。

そのぶん、本にぐるりと包み込まれるような感覚があり、「本の森」という名前らしい空間ともいえそうです。
なお、本棚の上の方の本は落下防止のため固定されていて、同じ本が下の段にも用意されているそうです。
デザインと安全性を両立させる工夫ですね。

大阪「こども本の森 中之島」と比べると
以前、大阪の「こども本の森 中之島」も見学したことがあります。
(そのときの様子はこちらのブログで紹介しています)

こども本の森中之島の外観
2つの建物を比べると、こんな違いがあります。
- 中之島:鉄筋コンクリート造の3階建て、延床面積は約800㎡
- 札幌:鉄骨造の平屋、延床面積は約350㎡
※延床面積(のべゆかめんせき)とは、建物の床面積の合計のことです。
札幌は中之島の半分以下の広さなので、館内はかなりコンパクトで、少し狭く感じました。
通路も幅が狭めで、誰かが本を探していると、その後ろを通るときにはタイミングをはかる必要があるくらいです。

こども本の森中之島の内部
中之島は広さに余裕があるぶん、座って本が読める大階段や、円形の吹き抜けなど、遊び心のある空間がいろいろありました。
一方で、中之島はコンクリートの壁で囲まれた部分が多いのに対し、札幌は大きなガラスに包まれています。
明るさや開放感でいえば、札幌のほうが上かもしれません。

こども本の森北大の内部
また、小中学生を中心とした子ども向けの図書館なので、子どもの体の大きさにはちょうどよいスケールなのかもしれませんね。
寄贈した『モモ』を探してみました
実は1年ほど前、札幌市がこの図書館のために本の寄贈を募集していたので、私もミヒャエル・エンデの『モモ』を寄贈していました。
せっかくなので館内で探してみたところ、なんと見つけただけで4冊。
いろいろなテーマのコーナーに分かれて置かれていました。

本はテーマごとに並べられていて、絵本から図鑑、専門的な本まで本当にさまざまです。
大人でもゆっくり時間をかけて読んでみたくなりました。
5,利用方法とアクセス
見学される方のために、利用方法も簡単にまとめておきますね。
蔵書は2026年10月現在、約1万5千冊とのことです。
- 場所:札幌市北区北8条西6丁目(北海道大学構内)。札幌駅から近い、北大の門のそばです
- 開館時間:10:00~18:00
- 入館料:無料
- 入れ替え制:1回90分ごと(夕方16時からの回のみ120分)
- 予約:インターネットでの事前予約制。予約なしで入れる先着枠もあります
- 休館日:毎月第2・第4水曜日、年末年始など

見学したのは平日でしたが、満席でした。事前予約がおすすめです。
オープンから2か月たっても、人気の高さがうかがえますね。

最新の情報は、こども本の森 札幌・北大の公式サイトでご確認ください。
写真撮影は個人利用の範囲で認められています。
私は受付の方にブログに載せたいとお伝えし、ほかの利用者の顔が写らないように撮影しました。
撮影される方は、ほかの方への配慮を忘れずに楽しみたいですね。
美味しいオーガニックコーヒーのある喫茶店
図書館から歩いて1、2分のところにコーヒーが飲めるお店があり、オーガニックコーヒーがとても美味しかったです。
見学のあとにひと息つくのもおすすめですよ。

CAFE&LABO「HOKUDAI MARCHE」北大マルシェ
6,まとめ
「こども本の森 札幌・北大」は、曲線ガラスに包まれた小さな平屋の図書館でした。
規模はコンパクトですが、曲線の本棚、靴を脱いでくつろげる小部屋、外を眺められるカウンター席など、子どもたちが本と出会うための工夫がたくさん詰まっています。
秋はドングリの落ちるアプローチが楽しめましたが、雪の中に建つ姿もきっと素敵だと思います。
冬になったら、また見に行ってみたいですね。

今回に関連したブログもどうぞ。
・金沢にある素敵な図書館

・仙台にある宇宙船のような図書館

・安藤忠雄さんが最初に設計された大阪にある「こども本の森」

・安藤忠雄さんのことが良くわかるブログ

・安藤忠雄さんが改装の設計をした「国際子ども図書館」

最後までお読みいただき感謝いたします。
今回のブログが、建物見学の参考になりましたなら幸いです。
素敵な建築との出会いによって、みなさまの心がより豊かになりますように。

田中昭臣(たなかあきおみ)
1級建築士
北海道札幌市の設計事務所「ライフホーム設計」代表
建物を見て歩くのが好きです。建築や住まいの魅力を、文章やお話でお伝えするお手伝いもしています。どうぞお気軽に。
