最近は建築費や土地の価格が上がり、「家はできるだけコンパクトにまとめたい」というご相談がとても増えています。
間取りが小さくすると「暮らしにくいのでは?」と心配される方も多いのですが、実は工夫しだいで、機能的で住みやすくなるものです。
今回のブログは、札幌で設計をしている建築士が、人気のある間取りや失敗しないためのポイントをわかりやすくご紹介します。(実例図もブログの下段にございます。)
1,コンパクトな間取りのメリット
(1) 建築費を抑えられる
建築費は延べ床面積に比例して大きくなります。
コンパクトにまとめれば、基礎や屋根の面積を小さくできるため、建築コストを抑えられます。
(2)光熱費も抑えられる
家が小さいほど、冷暖房に必要なエネルギーも少なくて済みます。
冬の暖房費がかさむ札幌では、コンパクトな家は「ランニングコスト」でもメリットがあります。
(3)動線が短く、暮らしが楽になる
広い家は移動が多くなりがちですが、コンパクトな間取りは動線が短くなります。
毎日の家事や片付けが効率的になり、生活のストレスが少なくなります。
2,コンパクトな間取りのデメリット
(1)モノがあふれやすい
広さに余裕がないため、収納不足だとすぐにモノが表に出てしまいます。
(2)狭さを感じることがある
コンパクトな部屋なのに、圧迫感を感じさせるような内装や家具などを置くと、より狭さを感じてしまうことがあります。
コンパクトな部屋に合わない大きさの照明器具も狭さを感じます。

照明で狭さを証明される?
さて次の章からは、メリットを生かしてデメリットを消す間取りの作り方をご紹介します。
4,失敗しないための間取りの作り方のポイント
(1)人気で流行りの収納を取り入れる
家が小さいと物が、散らかりやすくなります。
間取りの工夫で収納を充実させることが重要です。
特に最近の注文住宅で人気の収納はこの3つです。
・玄関 → シューズインクローク(SIC)
・キッチン横 → パントリー(食品庫)
・寝室や洗面所近く→ ウォークインクローゼット(WIC)やファミリークローゼット
これらは間取りでの要望も多く、評判も良いです。
それぞれの特徴と間取りのポイントを簡単に紹介します。
きゅうクツな玄関
Ⅰ、シューズインクロゼット(SIC)
玄関は、どうしても外で使うモノがあふれがちです。
最近人気なのが、シューズインクロゼット(クローク)や土間収納です。
(短くシューズクロゼット、シューズクロークなどとも呼ばれ始めています。)
・シューズインクロゼットとは
これは玄関の横に設置された、靴以外の傘、コートなどの上着、ベビーカーやアウトドア用品などをしまえる広めの収納のスペースのことです。
玄関が狭くてもすっきりします。
また、私の住む北海道では、冬、雪で濡れたコートを部屋に持ち込まなくてよく、除雪道具も置けるので、近年要望される方がふえています。
・シューズインクロゼットの種類
シューズクロゼットには「ウォークイン型」「ウォークスルー型」の2つのタイプの間取りがあります。
ウォークスルー型は、ほかの部屋にも行ける動線の間取りです。玄関に靴を置かなくてもよいのですっきりします。
ウォークイン型はほかの部屋に行けませんが、人が歩く部分が少ないので収納量が多くなります。
それぞれメリットがありますが、コンパクトな間取りの場合は、収納量が多いウォークイン型が一般的です。
スルーする人(笑)
・シューズクロゼットの広さ
大きさ的には1畳から2畳くらいの要望が多いかもしれません。
生活スタイルに合わせて、コート掛けのパイプや下駄箱の棚を設置してもらうよう工務店などに依頼しましょう。
棚は、移動できる可動棚が便利です。
詳しくは、下記ブログをどうぞ

Ⅱ、パントリー(食品庫)
・パントリーの人気の背景
パントリーは食品庫のことで、キッチンの近くに保存したい食品や調理器具などがしまえる収納のことです。
共働きが増えたこともあり、週末にまとめ買いをする家庭が増えました。
そのため買い置き食品をまとめてしまえる食品庫(パントリー)を設ける間取りが人気が増えました。
・位置などのポイント
広さ的には半畳から1帖ほどのスペースが一般的です。
また、すぐ取り出せるように棚は、奥行きを深くしすぎないことがポイントです。
キッチンの近くに配置するのがベストです。
パンと鳥。
・北海道では昔から
雪で買い物に行きづらい札幌では「ストックできる安心感」で、人気がありました。
また海産物が豊富な北海道だけではないかと思いますが、以前から冷凍庫を置けるスペースを要望される方は多かったです。
業務用の大型冷凍庫をお持ちの方も珍しくないかもしれません。
北海道では長い停電があると、冷凍庫のものを腐らす前に食べようと、あちこちでバーベキューが始まります。(北海道あるある)。
Ⅲ、広めのクローゼット
寝室にウォークインクロゼットをつけたり、家族で使えるファミリークロゼットなど大型の洋服入れは注文住宅の間取りではたいへん人気があります。
・ウォークインクローゼット(WIC)
ウォークインクロゼットとは、寝室につなげてつくる大容量の収納ことです。
衣類をまとめて管理できるので、衣替え(ころもがえ)の必要が少なくなります。
広さは、衣類の多さにもよって違ってきますが、2畳から3畳くらいが一般的かもしれません。
・ファミリークローゼット(ファミクロ、FC、FCL)
家族みんなの衣類を一か所にまとめてしまえる収納です。
略してファミクロと呼ばれ、FCまたはFCLと図面で表記されたりもします。
メリットして洗濯後に1か所へ衣類を運べばよいので家事が楽にできます。
そのため共働き世帯からの支持がとても高くなっています。
家族全員分の衣類を想定して、4人家族だと4帖ほど確保できると安心です。
洗濯動線を意識し、ランドリールームのすぐ横に配置できるとベストです。
ただ、コンパクトな間取りの場合、1階に配置できなケースも多く、2階にするケースは多くあります。
その際は、家族の部屋と等距離の位置に配置するようにします。
Ⅳ、あると便利な収納①、サニタリー収納(洗面収納)
このほか、あると便利なのが洗面所やランドリールームのサニタリー収納です。
タオルや歯磨き粉、洗剤など洗面所にはしまっておきたいものがたくさんあります。
これらをしまえる収納があると、洗面所がすっきりします。
詳しくは、下記ブログをどうぞ

Ⅴ、あると便利な収納②、リビング収納
家にはこまごまとしたものがあります。
たとえば電池、筆記用具、裁縫道具、ドライバーなどの工具、資源ごみ用の袋、学校からのお便りなどなどです。
できることなら、これらをまとめてしまえる収納があると非常に便利です。
リビング収納とは、様々なものをまとめてしまえる収納のことを言います。
収納の場所としては、リビングや廊下など皆が使用できるところが良いです。
リビングの場合、生活感が出ないように、扉をつけたり皆から見えない位置に作るのがポイントです。
Ⅵ,この章のまとめ
こうして整理してみると、収納は「大きさ」よりも「配置」が大切だとわかります。
どの収納も「使う場所のすぐそばにまとめてつくる」ことが、散らからない家づくりの秘訣です。
(2)階段下などデッドスペースを生かす
住宅には家具を置くには狭すぎる、部屋としては天井が低いなど部屋としては使用しずらいデットスペースというものが出てくることがあります。
コンパクトな間取りを作る場合は、このデットスペースを生かしたいものです。
・階段下を生かす
階段の下は、天井が斜めになってしますので部屋としては圧迫感があります。
ただ、この部分は収納やトイレ、ワークスペースなどに利用できます。
・ニッチなど壁厚を生かす
ニッチとは、柱と柱の間の空間を使った壁のくぼみのことです。
ニッチはちょっとした飾り棚や収納棚に利用できます。
建材メーカーにニッチ収納の部材も多くあるので、安くてきれいに仕上がります。
小さな工夫の積み重ねで、収納力は大幅に変わります。
3. 動線を短くする
(1)家事動線を短くする
コンパクトな家こそ「動線の工夫」が大切です。
キッチンと洗面所(ランドリールーム)が近いと、料理と洗濯を同時進行しやすくなり、家事が楽になります。
また、洗濯乾燥室とクロゼットが近いと「洗う→干す→しまう」が短い動線で完結すると、毎日の体の負担が減ります。
ファミリークロゼットと洗濯乾燥室が隣接された間取りはベストです。
(2)廊下をできるだけ減らす
廊下は移動のためだけの空間。
できるだけ減らして居室に面積を割り当てると、家はコンパクトでも広く使えます。
Ⅰ、リビングを中心にした間取りはコンパクトに
マンションなどは、同じ30坪くらいの一戸建ての間取りでも、部屋数もあって広く感じるのは廊下を極力少なくしているからです。
Ⅱ、リビング中心の間取りのデメリットを消す方法
ただ、リビングに接している部屋は、光や音が気になることがある。
そうした場合、旅館にあるような附室を設けると直接伝わらなくなり、デメリットが緩和されます。
Ⅲ、廊下を兼ねたパントリーやファミクロにする
廊下を兼ねたファミリークロゼットや収納スペースにすれば、空間を無駄にしません。
パントリーは、玄関とキッチンの動線上にあると、買い物の荷物を運ぶのが楽です。
(3)階段の位置に注意する
2階建ての場合、階段の位置次第で「廊下の多さ」や「部屋の使いやすさ」が大きく変わります。
2階の階段位置を工夫することで、部屋と部屋を直接つなげやすくなり、廊下が最小限で済みます。
でも2階が、坪数が小さなコンパクトな間取りの場合は、あまり気にしなくてもよいかもしれません。
4. 明るさと高さで広く見せる
部屋を圧迫させる雰囲気があると、部屋が狭く感じられ失敗後悔します。
(1)床に置くものを少なくする。
引っ越しされたことがある方はわかるかと思いますが、なにも家具がない部屋が広くみえます。
これは床が見えると部屋全体が広く感じられる効果があるからです。
つまり、家具を置かないほうが広く見えるかと思います。
先の章で書いてきましたSIC(シューズクロゼット、土間収納)、パントリー、WIC(ウォークインクロゼット)などの収納を充実したの間取りは、広く見せるには効果的です。
テレビドラマで、お金の少ない家を表現する場合は、部屋にものを多く置くそうです。
ミニマリスト?
(2)内装は明るい色でまとめる
明るい部屋のほうが広く見えます。
そのため白やベージュなど明るい色で部屋をまとめると部屋が広く感じられます。
特に天井は、明るめの色のほうが開放感が出ます。
コンパクトな家の場合は、床、壁、天井は明るい色を選ぶのがベストです。
(ただ、色の好みがありますので絶対ではないです。)
壁紙メーカーや床材やドアを扱う建材メーカーでは、色のコーディネートがホームページ上でできます。
赤い色の部屋なら毎日がクリスマス?
(3)大きな窓にする
部屋を明るく見せるには、大きな窓から太陽の光をたっぷり取り入れる方法があります。
環境にもよりますが、できるだけ自然光を取り込める窓にすると、空間をより広く感じられます。
人が集うリビングなどは大きな窓のほうが、明るく過ごしやすいかもしれません。
下記の画像で印象を確認してみましょう。
最近のハウスメーカーの注文住宅の家は、反省するよう小さい窓の家が増えている感じがします。
打ち合わせの際には、必ず大きさを確認したほうが良いです。
(4)明るくなる照明器具を選ぶ
夜は照明器具が効果を発揮します。
天井の暗くなる部分を明るくすると、広く見える効果があります。
部屋の四隅などは暗くなりがちなので、ダウンライトやスポットライトなど間接照明を取り入れるのもよいでしょう。
夜はくつろげる照明が好みであれば、多少暗くてもまったく問題ありません。
(5)家具は低いものを選ぶ
高さのある家具は、存在感があるのですが、狭い部屋だと圧迫感があります。
低い家具のほうが、広く感じられる傾向があります。
部屋の中央に置くソファーが背の高いものだと、部屋が狭く感じられます。
背の高い家具を置きたい場合は、壁に沿っておくように配置したほうが広く見えます。
存在感のある椅子。
5,20坪台のコンパクトな間取り図の実例
コンパクトな間取りの実例図をご紹介します。
28坪、3LDKの間取り
*1階平面図
上の間取り図は、1階にシューズクローク、パントリー、サニタリー収納、リビング収納と、人気の収納が充実しています。
また階段下は、トイレと物入と有効利用しています。
玄関には飾り棚用のニッチを設けています。
また、家族のコミュニケーションの取りやすいリビング階段にしています。
リビング階段でないほうがご希望であれば、玄関側に階段の登り口を設けてやめることも可能です。
キッチンとランドリールームは近接していて直線的な動線でつながり、家事もしやすくなっています。
また、LDKは大きな窓を設けて明るくし、家族だんらんがしやすいようにしています。
廊下がないので、1階はコンパクトにまとめています。
*2階平面図
2階にはファミリークロゼットを設け、収納を充実させ家事の負担を少なくしています。
ファミリークロゼットは、どの部屋からも近い距離に設置しています。
2階にトイレもありますので、使いやすいかもしれません。
必要なければ、納戸にするのもよいかもしれません。
このような工夫で、延べ床面積が28坪程度でも十分に快適な暮らしが可能になります。
坪数が28坪なので、坪単価が70万円以内で収まれば、注文住宅でも建築費用が2000万円以内と安く家が建てられると思います。
生活はミニマムでも、人生は広く豊かに!
6,まとめ
札幌のように冬の光熱費や雪対策のコストがかかる地域では、コンパクトな間取りの家は「無理のない家づくり」を実現する有効な方法です。
「小さい家=不便」ではありません。
むしろ無駄を省いた設計で、家族に合ったちょうどいい暮らしが叶えられます。
設計士としても、収納と動線を工夫したコンパクトな間取りを考えることは、お客様の暮らしを支える大切な仕事だと感じています。
家づくりを検討される際は、ぜひ「ただ小さい家」ではなく「快適に暮らせる小さな家」を目指してみてください。
関連ブログも是非どうぞ
・家事動線を短くすると生活が楽に

・ファミクロを作るポイントとは

・シューズクロゼットを生かすには

・洗面所の収納を充実させると生活が豊かに

・部屋を広く見せるポイントとは

・寒い北海道では西日を取り入れる

・変形した土地しか買えなかった場合の間取りは

なおコンパクトな間取りで悩まれている方はぜひ当設計事務所「ライフホーム設計」にご相談ください。

今回のブログが、みなさまの住まいの参考になりましたなら幸いです。
あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせる家が建てられますように。
ここからCMです。
・ブログを書いている設計士の紹介
田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士
建築設計事務所「ライフホーム設計」代表
*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。
(建築実績100棟以上、現在も月に2,3棟の間取り設計に関わる)
貴方の想いをカタチに、一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。
詳しいプロフィールはコチラ
・北海道札幌の設計事務所「ライフホーム設計」のこと
・新築の間取りの設計
あなたの「思い」を「かたち」に「一緒に作る」注文住宅。
対話を大切し、住みやすい間取りのオシャレなデザイン住宅を作ります。
北海道の札幌市近郊のの一戸建て、新築、建て替えの平屋建て、二世帯住宅など注文住宅の間取りのお悩みは、「ライフホーム設計」で個別相談を!(初回相談は無料)
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