所有している人は少ないかもしれませんが、「旗竿地」(はたざおち)と呼ばれる変形地の土地があります。
土地のデメリットを知りメリットを生かせば、楽しい家が造れます。
目次
1、旗ざお地とは
2、旗竿地のデメリット
3、旗竿地のメリット
4、旗竿地でしたい泥棒対策
5、デメリットを設計でカバーする(平屋建て、狭小住宅にも応用できる)
6、その土地に生かした設計を
1、旗竿地とは
建物を建てる場合に、敷地が道路より奥まっている場合、道路まで出る通路を確保しなければなりません。
建築基準法でも、敷地は道路に接する必要があります。
道路まで接する幅は、最低の長さの基準はありますが、一部が接していれば良いことになっています。
その為、通常、奥まっている敷地から、道路まで細長く通路のような敷地が出来てきます。(下図)
「上空から見ると、その通路のような部分が、旗の竿(さお)のように見えることから、旗竿地と呼ばれるようになりました。
「路地状敷地」とか「袋路」とも言います。
一般的にはデメリットが多いと言いますが、良い点もたくさんあります。
2、旗竿地のデメリット
*陽当たりや、風通しが悪くなりがち。
周りの家に囲まれやすい為、陽が入りずらくなり、風通しも悪くなりがちです。
*車の出し入れの不便さ
通路幅が狭いと出し入れがしづらい面があります。
*通路の幅と長さによって建築の条件が出てくる
通路の幅と長さによって、建物の大きさの制限が出てきます。
建築不可の場合もあるので注意~設計士に必ず相談を
a,通路幅が狭いと、200m2(約60坪)以上は、建てられない制約があります。
札幌市建築基準法施工条例
https://www.city.sapporo.jp/toshi/k-shido/kakuninn/tebiki/documents/41-58_h290606.pdf
b、3階建て
3階建ての住宅は、消防局の審査の避難や消火の点で、建物の配置や窓の位置など、設計の制約が出る場合があります。
これは、消防の判断になるので、プラン段階から消防局などと、打ち合わせが必要です。
担当者によって、判断が違うので、私も気を付けています。
c、再建築が出来ないこともある
よくあるトラブルは、再建築不可があります。
前の表のように、法律より幅が狭かったり、奥行きが長いと建築できないケースがあります。
この法律が適用になる前の中古住宅を買って、建て替えようと思ったら、現在の法律に適合出来ずに、再建築できないことがあります。
これは、かなり多いです。
2m必要なところが、昔の1間幅の1.81mで、わずか19cm足りないケースなどです。
不動産の広告などでも、再建築不可と表記しなければならないのですが、あいまいな表現になっていることもあるので、注意が必要です。
*不動産広告の見方(禁止事項編)https://www.zennichi.or.jp/public/knowledge/buy/5-3/
(「建築審査会の同意があれば可」などの表現ですが、よっぽどの理由がない限り「同意」を得られることは無いので、気を付けなければなりません。)
d、重機が入れなくて建築できない
旗竿地に接せる道路や通路幅が狭くて、大きな機械が入れないと建築できないケースがあります。
地盤が悪い土地で、長い杭を打つような大きな機械が入らない場合は、建築できないことがあります。
a,b,c,d いづれにしても、土地の購入前に設計士に、相談したほうが間違いはないです。
*建築費が上がる。
水道の引き込みや、下水の排水が長くなるので、建築費が上がります。
また、電気の引き込みも、電力会社も、他人の敷地の上空を通さなくなってきてます。
通路近くに無いと、自己負担で、敷地内に電柱を建てなければなりません。
大きな機械が入れない場合は、小さい機械で行うため、日数や回数が増えるので、建築費が割高になります。
地下室などは、高騰すると思われます。
*泥棒に狙われやすい
周りから見えづらい為、泥棒に狙われやすい土地になります。
以前、札幌市中央区の方が購入される際に、売り主さんから「10年間で3回入られた場所だから、気を付けなさい」とアドバイスされたそうです。
その方は、建築時に、セキュリティ対策は、かなりされました。
当ブログにも、対策例を下の方に、載せております。
*雪かき部分が長い
道路まで距離がありますから、北海道では雪かき部分が多くなります。
また、札幌で人気の排雪会社を頼む際も、通路前に雪を溜めておけないデメリットがあります。
敷地内に溜めるか、道路に面している隣人の方に置かしてもらえるように、頼まなければなりません。
3、旗竿地のメリット
デメリットしかないと、思われがちですが、良い面も多くあります。
プライバシーが確保しやすい
周りから、見えませんから、暮らしやすいと感じる人も多いです。
お施主様の中には、トイレや洗面所の窓は、生活しているのが分かるから、付けたくないという人は結構います。
そういう方には、向いています。
前に、村上春樹さんのエッセイで、「家事を裸ですると、自由で開放的なので良い」という話がありました。
家での生活は、道路から見られませんから、大丈夫ですね(笑)。
土地の値段が割安。
使いづらいデメリットがあるので、広さの割に割安な土地が多いです。
また、税金も周りの相場と比べて、評価が低いので、安くすむメリットもあります。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/11.htm
静かな環境
道路から離れていますから、車の音も聞こえづらく、静かな生活が出来ます。
街中でも、「静かだ」と話に聞きます。
4、旗竿地でしたい泥棒対策
旗ざお地は、泥棒対策と、その地形ならではの間取り設計が必要です。
泥棒対策
1、通路は明るく。できれば防犯カメラ。
泥棒に狙われやす土地なので、通路部分に防犯対策を行うと良いです。
昼夜、通路の入り口や通路部分を、明るくする計画が基本です。
通路入り口に、少し高めの門柱やポールを立てて、防犯カメラ(ダミーでも可)を設置するのも効果的です。
その場合は電気の配線が必要です。
線を見せないようにしたい場合は、地中埋設などにする必要があるため、早めに工事店へ依頼が必要です。
2、防犯ガラス、防犯性の高い玄関ドアの鍵
泥棒は、5分以上侵入にかかると、あきらめるデータがあります。
1階だけでも、防犯ガラスや、セキュリティの高い鍵を使用するようにしましょう。
窓の防犯ガラスは、フィルムの後張りも出来るのですが、新築時にメーカーに頼むと、合わせガラスの内側に貼れるので、剥がれる心配が少なくなります。
また、建物周りは、音の鳴りやすい砂利敷きが効果的です。
3、ホームセキュリティに入る
昔は、ホームセキュリティは設置費用が高く、お金持ちの方ばかりでした。
最近は、リースになってきて月額料金も安くなり、一般の方でも増えてきています。
一番嫌なのが、泥棒と鉢合わせなので、心配な方は加入が良いかもしれません。
セキュリティー会社のシールが貼っているだけでも、抑止力が働くと言います。
5、デメリットを設計でカバーする
設計の工夫によって、デメリットをカバーすることも可能です。
(1)車をバックで入れない配置計画にする。
クルマをバックで入れたくない場合、敷地に余裕があれば、旋回する方法もあります。
この方法で、建築された方からは「冬の夜間でも、安心して通路を通れることが出来る」とお話されていました。
最近の車は、自動運転化してきているので、もっと楽になると思います。
駐車支援のパーキングアシスト機能は、これから普及すると思います。
使うと楽になりますが、自動化は、運転が下手になりますね。(筆者経験談(笑))
(2)間取りの工夫をする
旗ざお地ならではの、メリットを生かし、デメリットを解消する、一戸建て注文住宅を新築、建て替える場合の間取りのポイントについて、書いてゆきます。
少し、平屋建て、狭小地の住宅の設計にも役に立つ部分があります。
・リビングに明るさを求めるなら上階か吹き抜け。
暗くなりがちな土地ですが、明るい風通しの良いリビングにしたいなら、2階や3階にする設計が良いです。
以前設計した家は、リビングを通路近くに持ってきて、さらに明るくしました。
低い階の場合は、吹き抜けなどで、明るさを確保する方法もあります。
また、上階にバルコニーが付けられると、プライベートな庭になります。
・建物をL型やコの字型にする
建物の平面を、L型やコの字型に変形して、明るさを取り入れる方法もあります。
これは、平屋建てにも応用できます。
隣地側にも高い壁を付けて、窓の位置を工夫すると、部屋が周りから見えない、プライベート空間にも出来ます。
裸で、家事をしてても安心ですね。(私は落ち着かないのでしませんが(笑))
6、その土地に生かした設計を
少し、変形地や狭小地住宅にも応用できるかと思います。
何か、設計のヒントになりましたなら、ありがたいです。
旗竿地を含め、その土地にあわせて、生かせる設計が、いろいろ出来ると思います。
(何か悩まれている方が、いらっしゃいましたら、ご相談いただければと存じます。)
長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせますように。
ほかの少し役に立つ住まいのブログもどうぞお読みください。
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盗難のことを書いたブログ
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土地の探し方のブログ
ほかのライフホーム設計のブログの一覧!
https://lifehome-sekkei.com/index.php/blog/
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田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士
建築設計事務所「ライフホーム設計」代表
*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。
貴方の想いをカタチに、一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。
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