注文住宅の悩みで、きちんと工事がされるか不安だという相談は多く聞きます。

先のトルコの大地震で多くの建物が崩壊した原因は建設業者の手抜きと言われています。

はたして家を建てる際にどのような対策ができるのでしょうか。

 

住宅の基礎の鉄筋

 

 

災害発生地域の皆様には、心よりお見舞い申し上げます。

一人でも犠牲者が少なくなる事と、被災された方の一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

 

目次

1,基準を守らなかったトルコ地震の建物

2,日本の建物は構造基準が守られているか

3,建築中の検査がない供託金制度

4,建築途中の検査の重要性

5,木造住宅で建築途中の検査が3回ある建設評価の検査

6,まずは契約前に確認を

 

強い家

 

 

1,基準を守らなかったトルコ地震の建物

 

トルコ地震の崩壊した建物とは

 

トルコ地震ではビルやマンションなどの鉄筋コンクリートの多くの建物が、パンケーキクラッシュ現象で崩壊しました。

このパンケーキクラッシュというのは、地震などで建物を支えていた下層にあった柱が崩壊し、その上の階が下階に次々落ちてきてパンケーキのように積み重なってゆく現象です。

この現象の原因は、柱が細かったり、鉄筋が少なかったりすると起きるとされています。

 

トルコでは日本と同じく地震が多かったため、耐震性に優れた基準が設けられ構造計算も厳しかったようです。

ただ、市や町に一定のお金を支払えば、その法律を免除される仕組みがあり多くの建物が違反建築物だったそうです。

そのため、昨年建てられた新しいマンションも崩壊したそうです。

そのマンションは高品質なコンクリートを使用していると宣伝していたそうです。

 

新聞の記事

北海道新聞より




 

 

2,日本の建物は構造基準が守られているか

 

生存空間ができる構造基準

 

日本も地震大国なので建物の構造はかなり厳しい基準になっています。

震度7クラスの大地震でも、必ず逃げられる空間と時間が出来ることが構造計算には求められています。

そのため、近年の大地震では海外でみられるパンケーキクラッシュ現象は起きていません

日本ではグラッと揺れたら机の下ですが、海外では逃げろだそうです。

避難訓練

 

 

違反した場合の罰則が厳しくなった

 

構造計算を行った建築士が建築基準法を守らなかった場合、重たい処分で禁固刑になります。

建築士の罰則表

 

過去は罰金刑まででしたが、一級建築士が行った構造計算で不正が行われた事件があり、罰則が厳しくなりました。

その為か、それ以降に大きな不正問題はなくなったような気がします。

建築士もせっかく苦労して免許取ったのに、刑務所には入りたくはないですもんね。

試験勉強

建築士の資格は、実務経験が必要なので仕事と勉強を両立させながら取得することになる。

 

 

建築中の検査は無いので、設計通りなのは不明

 

建築基準法の法律では、新築住宅は建築前に設計の審査(確認申請)を受け、建物が完成した際に現場で図面通りできているか検査(完了検査)を受けることになっています。

そのため法律的には、完成時にしか検査がなく建築中の検査はありません。

ゆえにトルコ地震で問題になったコンクリートの厚みや鉄筋の量までのチェックは日本でもないのが現状です。

ただ、注文住宅を建てる際、住宅瑕疵担保履行法では保険制度を利用した場合のみ、建築途中の検査があります

 




 

 

3,建築中の検査がない供託金制度

 

10年保証の住宅(住宅瑕疵(かし)担保履行法)

 

構造計算の不正事件の後に「住宅瑕疵担保履行法」という住宅購入者を守るための法律(品確法)が出来きました。

これは住宅業者は引き渡し後10年間は、建物の欠陥(構造と雨漏り)があった場合、補修しなければならないという法律です。

瑕疵担保保険の10年保証の住宅の箇所

住宅瑕疵担保保険責任協会 https://www.kashihoken.or.jp/kashihoken/

 

 

ハウスメーカーが倒産しても10年保証

 

建てた会社が倒産した場合も10年保証で家を直せるよう、住宅業者は住宅瑕疵担保責任保険に加入」もしくは「保証金を供託所に預ける」ことをしないと家を建ててはいけないことになりました。

保険を利用した場合で10年以内に雨漏りが発生すると、保険金を使って直すことができます。

 

住宅会社が倒産しても保険金が支払われる仕組みの表

 

 

住宅瑕疵担保責任保険は建築中の検査がある。

 

保険制度を利用した場合は、加入の条件として建築中に2回検査を受ける必要があります。

検査は、木造住宅の場合は、「基礎の配筋(鉄筋が組み上がった)時」と「構造の下地が見られる状態」の2回行われます。

検査員は、建築した会社と無関係で、建築士などの資格を持った人が行います

 

住宅瑕疵担保責任保険の検査員

まもりすまい保険https://www.zenjukyo.jp/merit/kashitanpo/mamorisumai

 

 

保険制度は弁護士に無料相談できる。

 

保険制度に加入した住宅業者から購入された方は、弁護士会の「住宅紛争処理支援センター」に無料相談もできます。

さらに住宅業者とトラブルになった場合は、1万円の申請料で弁護士に調停に入ってもらえます。

住宅紛争処理支援センター

*まんがでわかる「住宅かし担保履行法」

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/dl_files/syouhisya-manga.pdf

 

 

供託制度の場合は、建築中の検査がない

 

一方、住宅業者が供託制度を利用した場合は、建築中の検査がありません

 

 

保険加入と供託金を預ける住宅メーカー割合は半々

 

保険加入と供託金を預ける住宅業者はほぼ半分です。

つまり建築中の検査を受けずに、引き渡しが行われている住宅が半数くらいあるということです。

住宅瑕疵保険と供託の加入割合の表

 

 

保険加入は工務店や地場の住宅メーカー、供託金は大手ハウスメーカーが多い

 

住宅瑕疵担保険に加入費用は、1棟当たり約10万円くらいです。

供託金の場合は、年間の棟数によって預けるお金が違ってきます。

年間1万戸くらい売るハウスメーカーだと10年間で計18億9千万円預けることになります。

 

販売戸数の表

2022年06月21日 住宅産業新聞による

 

供託金の計算表

棟数が多いハウスメーカーだと、保険に加入するよりは供託金を預けたほうがかなり安くできるメリットがあります。(一戸あたり約10万円(保険)>1.89万円(供託))

逆に棟数の少ない住宅メーカーは、保険制度を利用したほうが安くできます

(年間10棟だと10年間で1億円の供託金が必要だが、保険だと1千万円で済む)

そのため、全国展開するハウスメーカーは供託金制度を利用し、地場のハウスメーカーや工務店は保険制度を利用する傾向にあります。

大きな会社

大きな会社はつぶれないという考え方。でも検査しないはどうなのでしょう?

 

 




 

 

4,建築途中の検査の重要性

 

現場管理には会社によって差があり、精度も違ってくる

 

供託金制度を利用しているハウスメーカーには、現場管理をしっかりしている会社があります。

そのような会社は現場監督任せではなく建築途中の社内検査も行っていて、厳しくチェックしているように思えます。

ただ残念ながらあまり現場管理をされていない大手ハウスメーカーも私が見ている中ではあります

そのような会社は現場監督さんもあまり現場にいないような気がします。

そこの監督さんに聞いてみると、引き渡しをした家の手直しに行くことが多いとのことでした。

現場の管理によって建物出来上がりに差がでるのかと思います。

欠陥住宅

 

 

 

建築士の独り言

 

現場がきれいなところは、社内チェックも厳しいところが多く、逆に汚い場合は、社内チェックも甘く建物の精度も悪くクレームなども多いように思えます。

モデルハウスだけではなく、建築途中の現場を見るのも住宅会社選びのヒントになるかと思います。

 

 

建築現場

空き缶やたばこの吸い殻など落ちていないかを見るのもよいです。

 

 

建築途中の検査があるのが望ましい

 

日本では建築基準法では、完成時のみ現場検査があります。

でも完成時だと重要な基礎や柱の構造部分は、土の中や壁の中にあるので確認することはできません。

トルコの地震で倒壊した建物は設計図面通りに作られていなかったことが原因と言われています。

住んで安心なのは建築途中に検査を行われている建物かもしれません。

 

注文住宅の基礎

 

住宅の基礎

家で大切な基礎の鉄筋も、コンクリートを流してしまうと見ることは出来なくなる。

 

 

検査するの利害関係のない人がベスト

 

検査する人は、家を建てている会社の社員ではなく、利害関係のない建築士など資格を持っている人が行うのが望ましいかと思います。

会社の仲間同士でもしっかり検査している会社もありますが、上下関係などで甘くなるのかと思います。

またどんな検査員が来るかわからないほうが、よりしっかり管理するかもしれません。

 

建物検査

一般の人が自分で建物チェックするのは結構難しい

現場監督でさえ怪しいところもある。

 

建物のチェックシート

住宅保険の設計施工マニュアル

https://filebox.mamoris.jp/%e6%96%b0%e7%af%89_%e8%a8%ad%e8%a8%88%e6%96%bd%e5%b7%a5%e5%9f%ba%e6%ba%96%e3%83%bb%e5%90%8c%e8%a7%a3%e8%aa%ac_2019%e5%b9%b4%e7%89%88%ef%bc%88%e7%ac%ac%e4%ba%8c%e7%89%88%ef%bc%89.pdf?_gl=1*wnz3tl*_ga*MTIzNjg3NTQ4Mi4xNjc3NDg2ODgw*_ga_03TQ5P9WTS*MTY3NzU2MjkzMS4zLjEuMTY3NzU2MzE0NS4wLjAuMA..

 

 

供託制度を利用している会社でも、住宅瑕疵担保保険に加入できる

 

供託制度を利用している会社でも、瑕疵担保保険と併用しているところもあります

建売住宅(分譲住宅)などは住宅瑕疵担保保険にしているようです。

費用は10万円くらいかかるかもしれませんが、頼んでみるのも一つかもしれません。




 

 

5,木造住宅で建築途中の検査が3回ある建設評価の検査

 

公的機関で現場審査があるのは住宅性能評価制度

 

長期優良住宅は設計審査のみで現場審査はありませんが、住宅性能表示制度で建設評価を受ける場合は建築途中の検査があります。

住宅性能表示制度とは、その住宅が「地震などに対する強さ」「火災に対する安全性」「省エネルギー対策」など10分野の性能を評価してくれます。

住宅性能表示制度

住宅性能表示制度https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/shintiku/03.html

 

 

住宅性能表示の建設評価は4回現場検査がある。

 

木造住宅の建設性能評価の場合は、基礎、構造、断熱(家の中の壁をふさぐ直前)の建設途中の検査が3回と完成時の1回のあわせて4回の検査があります。

住宅性能表示制度の建設評価

 

住宅表示制度のメリット

 

評価によっては、火災保険が安くなったり、融資のフラット35で優遇金利が受けられたりするメリットもあります。

瑕疵担保保険と同じく弁護士会の「住宅紛争処理支援センター」に無料相談もできます。

弁護士

 

費用と注意点

 

費用はおおむね30万円くらいはかかるかと思います。

ただし会社によって違うので依頼する前に、どれくらい費用が掛かるか聞くのが良いかと思います。

重要)住宅性能表示制度で、現場検査を受けるには「設計住宅性能評価」と「建設住宅性能評価」の2つ申し込まなければなりません。設計評価だけでは現場検査はありませんので、依頼する際ご注意を

 

 

十あt九性能表示のキャラクターいえまるくん




 

 

6,まずは契約前に確認を

 

保険か供託金か契約前に確認する

 

住宅瑕疵担保履行法により住宅事業者は必ず、瑕疵担保保険か保証金の供託のいずれかを選択しなければならない法律があります。

注文住宅を検討していて現場が不安な方は、少なくともご契約前に建築される会社がどちらを選択しているのか確認するのが良いかと思います。

供託金の場合に、保険にすることもできるかも聞いてみる必要があります。

また、住宅性能表示制度の建設住宅性能評価を利用しているかも聞いてみるのが良いかと思います。

そのうえで、住宅メーカーの選定や保険制度や住宅表示制度などの申し込みを検討してみるのが良いかと思います。

 

 

雨漏りは間取りも重要

 

手抜き工事だけでなく、良い家を作るには建物の形も重要になります。

今回のブログは工事現場のブログなので詳しくは書けませんが、デザイン重視の家で壁が少なかったりすると地震の時、家が耐えることができません。

また、屋根が複雑になると上手く防水の施工できず雨漏りの原因になります。

本当は間取りからチェックできるとかなり良い家になります。

 

複雑な屋根の住宅

一般財団法人 住宅保証支援機構 配布資料

 

雨

 

 

手抜き工事だと耐震性を発揮できない

 

構造的に強い間取りを作っても、工事で手抜きがされると性能を発揮できません

地震など想像もつかないような大きさの自然災害だと、人間の作ったものも壊れることもあるかと思います。

でも想定内の災害で建物が人の命を奪うのは避けなければなりません。

頼んだ会社は有名なハウスメーカーだから大丈夫ということはありません。

自分が住む家を建築途中に検査してもらうのは、完全ではありませんが有効な方法です。

 

 

最後に

 

住まいは人生の買い物でも1番高価なものかもしれません。

きちんと作られるのか不安になるのは自然なことだ思います。

そのため当設計事務所でも間取りの相談を受けた際、建築途中のチェックしてくれないかという依頼の話も多くあります。

公的な機関の検査員に依頼する以外にも、知人で建築士さんがいれば頼んでみるのもよいかもしれません。

いずれにしても、どんな方法でも建築中に第3者に検査してもらうことをお勧めいたします。

 

「注文住宅は2度ベルを鳴らす」間取りのセカンドオピニオンサービス

 

今回のブログが、みなさまの住まいの参考になりましたなら幸いです。

最後までお読みいただき感謝いたします。

あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせる家が建てられますように。

(ブログの最後に過去の書いた関連ブログの一覧がありますので、ご参考にどうぞ)

 

前川邸のリビングにいるブログを書いている設計者

ブログを書いている設計士

 

 

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打ち合わせの様子

田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士

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*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。

(建築実績100棟以上、現在も月に2,3棟の間取り設計に関わる)

貴方の想いをカタチに一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。

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