迎賓館赤坂離宮は、国賓を歓迎する施設でと知られていますが、もともとは御所(住まい)として建築されました。
日本一の美しい荘厳な洋館でしたが、一部の方にはやりすぎではないかと感じられることがありました。
今回のブログは、御所にならなかったいきさつなども含めて、すてきな迎賓館赤坂離宮の見どころを書いてゆきたいと思います。
目次
1,迎賓館赤坂離宮は日本一の洋風建築
2,豪華なネオバロック様式の宮殿建築
3,正面玄関側は湾曲させた特徴的なデザイン
4,庭園側の赤坂迎賓館のデザイン
ちなみに①、日本では非左右対称が好まれる
5,広大な噴水庭園
6,地震対策された迎賓館赤坂御所
7,豪華絢爛な内装
8,あまり使われなかった旧東宮御所の理由
ちなみに②、離宮という意味は
9,最後に~迎賓館赤坂離宮は、日本の歴史的な価値がある建物である
1,迎賓館赤坂離宮は日本一の洋風建築
・明治に建築され、昭和に国宝に指定される
迎賓館赤坂離宮は、建築家、片山東熊(かたやま とうくま)の設計により、明治42年(1909年)に東宮御所(大正天皇(当時は皇太子)の邸宅)として建築されました。
ただ御所としてはほとんど使用されず、戦争後は国の施設になりました。
昭和49年(1974年)に、本館は村野藤吾、和風別館は谷口吉郎の設計協力によりに迎賓館として改修され、平成21年(2009年)に国宝に指定されました。
2,豪華なネオバロック様式の宮殿建築
迎賓館赤坂離宮は、日本で一番美しい洋風建築と呼ばれています。
また東洋一の宮殿建築とよばれ、日本では唯一のネオ・バロック様式のデザインです。
もともとバロック建築は、内外装とも豪華絢爛な装飾があるのが特長です。
そのためバロック様式は富や権力を表現できる様式ということで、教会や宮殿など大きな建物が16世紀前後に多く建築されました。
・国の威信をかけ建築
国と国の競争の激しかった19世紀に、国家の威厳をしめす手段として再びバロック様式での建築が盛んになり、このころのデザインのことをネオバロック様式と呼ばれました。
天皇陛下(大正天皇)の住む予定の東宮御所は、国家の威信をかけることもあり、ネオバロック様式で建築されることになりました。
設計は、京都国立博物館や東京国立博物館 表慶館など、古典的なバロック様式の宮廷建築を主に手掛けていた建築家の片山東熊(かたやまとうくま)で行われました。
3,正面玄関側は湾曲させた特徴的なデザイン
・包み込みように招き入れる正面玄関
ネオバロック様式の特徴は、豪華な装飾と左右対称の外観です。
迎賓館赤坂離宮もそれにならって建築されています。
正面玄関側は、それを中心に建物の両翼を前に湾曲させながら張り出したデザインになっています。
圧迫することなく人を包み込むように玄関へと招き入れる感じがします。
・洋風建築に和の装飾でアクセント
迎賓館赤坂離宮は西洋のバッキンガム宮殿やベルサイユ(ヴェルサイユ)宮殿の装飾を参考に建築されたいわれています。
ただ、西洋建築そのままではなく、部分的に和の様式も取り入れられています。
正面玄関上の屋根には鎧(よろい)兜(かぶと)を被った武者の飾りが見て取れます。
鎧武者は上の写真のように屋根の上で対になっています。
神社の狛犬のように、口を開いている像と閉じている像になっているため、「阿吽(あうん)の鎧武者」とガイドブックには書かれています。
鎧武者の隣の屋根には天球儀のデザインのもの飾られています。
4,庭園側の赤坂迎賓館のデザイン
正面側は湾曲した外観でしたが、主庭側の建物の形は直線的になっています。
また、主庭側は南に面しているため、天気が良いと建物が白く輝き明るい印象になります。
・ネオバロック様式の左右対称(シンメトリー)の外観デザイン
また正面玄関側と同じく左右対称(シンメトリー)の外観になっています。
シンメトリーはネオバロック建築の特徴になっていて、バランスがある安定した調和ある美しいデザインと言われています。
ちなみに①、日本では非左右対称が好まれる
富士山は左右対称で、均整の取れたプロポーションが美しく人気がありますね。
でも日本では、左右対称のデザインは人工的で不自然な感じがする印象の方が多く、避けられる傾向が少しあります。
Q,どちらの絵のほうがお好きでしょうか?
すき好きですかもしれませんが、ちょっとズレ(バランスが崩れ)ているほうが、好きという人は多いかもしれません。
まあ、注文住宅でシンメトリーの建築をしようと思うと、敷地が広くて、建物も大きくないと難しいかもしれませんが。
床の間などは非対称的に作ります。
閑話休題
・宮殿建築に欠かせないギリシャ神殿のような列柱
庭側も曲線の階段や外壁の彫刻、ギリシャ神殿のような列柱など豪華な装飾がされています。
2階バルコニーにある列柱は、宮殿建築には欠かせないものです。
柱の上には葉っぱの装飾がされているのが、西洋建築の特徴でもあります。
金色の雨どいが目を引きます。
ちなみに北海道では雨どいは外に出すと凍って割れてしますので、建物の中を通します。
・外壁は装飾された花崗岩
外壁が石造りの建物に見えますが、レンガの上に装飾(彫刻)された石(花崗岩)を張っています。
細部にまで手間がかかったデザインになっています。
菊の紋章もありますね。
5,広大な噴水庭園
正面玄関の反対側には、広大な庭があります。
この庭は、フランス式庭園の最高傑作のヴェルサイユ宮殿と同じ噴水庭園になっています。
王室が住むヴェルサイユ宮殿に参考に、日本の皇室の御所もにも噴水のある公園をつくられたのかもしれません。
ちなみに噴水を入れながら建物を撮影するのが迎賓館のフォトスポットになっています。
参考までにヴェルサイユ宮殿の画像はこちら
上はベルサイユ宮殿
ヴェルサイユといえば、私の年代はこういった漫画を思い出します。
・噴水はゴシック様式で見られるギリシャ神話の装飾
噴水は、主庭の中心に配置されています。
噴水は建築当初からのもので、国宝に指定されています。
またゴシック建築の庭園で見られるギリシャ神話の装飾がされています。
この装飾は下半身がライオンで、上半身が鷲というグリフォンという架空の生物とのことです。
・現在の赤坂迎賓館の庭園の設計は村野藤吾
噴水は建築当初のものですが、現在の公園を設計したのは建築家村野藤吾です。
フランス式庭園にならって、左右対称を基本に計画されています。
上は前庭(正面玄関側)の様子
ヴェルサイユ宮殿は建物の周りに花や木がありませんでしたが、迎賓館赤坂離宮は植栽されています。
下がヴェルサイユ宮殿の写真
・格式あるなかにも柔らかなテイストの庭に
ベルサイユ宮殿は、建物周りに花や木がないので少し威圧感がありますね。
設計者の村野藤吾は、整然としたフランス式と真逆の自然なイギリス式庭園を目指していたとも言われています。
人をもてなす迎賓館にするということで、少し柔らかな庭園にしたかったのかもしれませんね。
・植物は松やツツジなど和のテイスト
建物周りに植栽されているのが松(クロマツ)の木など、少し和のテイストがあるのが赤坂離宮の庭の特徴かと思います。
ケヤキの木もあります。
ちなみにクロマツもケヤキも私の住む札幌は、寒いので自生していません。
札幌には「けやき」という有名なラーメン屋さんはありますが(笑)
噴水周りはサツキが植えられています。
ちなみにサツキも北海道では自生していません。
ちなみに北海道の桜はエゾヤマザクラ。
6,地震対策された迎賓館赤坂御所
西洋の建物は石造りですが、迎賓館赤坂離宮は鉄骨で補強されたレンガ積みの構造になっています。
西洋の石造では鉄骨をあまり使いませんが、設計者の片岡東熊は地震が多い日本に合わせた構造にしたようです。
このほか地震対策として地質(地盤)調査も入念に行ったようです。
その結果、基礎は軟弱地盤を避けた上に、補強材として杭(英国製レール)も打ち込んでいるとのことです。
耐震構造になっていたためか、大正時代に起きた関東大震災でも被災を免れたそうです。
地震対策をきちんと行ったことは、とても素晴らしいことですね。
7,豪華絢爛な内装
内部は招待された国賓の方々もあっと言わせるような、シャンデリアや天井画、素敵な家具など豪華絢爛な仕様になっています。
残念ながら、写真撮影はNGなので、ここは内閣府「迎賓館赤坂離宮」のホームページをご覧ください。
内閣府赤坂離宮のホームページ https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/
部屋ごとに飾りつけが違っていますが、どの部屋も華やかでした。
・迎賓館赤坂御所は一般公開されています
赤坂離宮迎賓館の見学は以前は不可でしたが、2016年より一般公開されるようになりました。
和風別館以外は、事前予約なしで来館可能です。
接遇の場として使用している日は非公開なので、公開日程をホームページで確認して見学されることをお勧めします。
内閣府赤坂離宮の予約サイトより 公開日程 | 迎賓館赤坂離宮 | 内閣府 (geihinkan.go.jp)
東京都港区元赤坂2-1-1(四ツ谷駅からのアクセスになります)
見どころも多いので所要時間は1.5時間から2時間程度かと思います。
8,あまり使われなかった旧東宮御所の理由
冒頭で記述した通り、もともと迎賓館の施設は東宮御所(大正天皇(当時は皇太子)の住まい)として建築されました。
ただ御所として住まわれることはあまりありませんでした。
・御所として使われなかった理由とは
主に2つあったといわれています。
理由①、明治天皇から派手、豪華すぎると文句を言われた
建物をご覧になられた明治天皇から「あまりに派手で豪華すぎる」と言われたそうです。
このことから住みづらくなったといわれています。
西洋に追いつこうと造ってきた工事関係者や設計者の片山東熊はその言葉に固まったといいます。
(ちなみに明治天皇は木造の御所だった。(洋風な広間もあったとのこと))
理由②、間取りの使い勝手が悪かった
西洋の宮殿の間取りを真似て作ったので住みづらかったようです。
これは建物の左半分(東側)が皇太子、右半分(西側)が皇太子妃と分かれて暮らしをする間取りだったとのことです。
宮殿建築が流行ったころ西洋の王族では、政略結婚が多く、夫婦別々で暮らしていたそうで、それを真似た間取りだったそうです。
これらのことから、けっきょく皇居として使用はされなかったのではないかとのことでした。
また住まわれても、豪華絢爛すぎて気がやすまらなかったかもしれませんね。
迎賓館赤坂離宮の門は、建築当初は威厳のあり黒色でしたが、迎賓館として使用するにあたって柔らかい印象の白色に塗り替えられました。
ちなみに②、離宮という意味は
離宮とは皇居以外の住まいのことを言う意味です。
つまり本邸ではなく別邸としては使用されたようです。
赤坂にあるので「赤坂離宮」と言われるようになったとのことです。
京都には上の写真のような「京都迎賓館」があります。
9,最後に~迎賓館赤坂離宮は、日本の歴史的な価値がある建物である
旧赤坂御所が建築された時期には、西洋では工業化が進み、装飾の少ないすっきりとしたデザインの近代建築(モダニズム建築)が主流になっていました。
この潮流に従い、装飾が控えめな建築が増え、旧東宮御所はその中で世界最後の西洋様式の宮殿(宮廷)建築とされています。
当時の流行に逆らっていたかもしれませんが、木造のみで構築されていた日本の建築を欧州のレベルに引き上げたこの建物は、その価値が大きかったと言えるでしょう。
日本の歴史的な重要性を持つ建築物だと思います。
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同時期の明治時代に建築された北海道の建物
旧帝国ホテルがある明治村には、旧東宮御所の家具が展示されています。
ネオバロック様式の後の「モダニズム建築」とは
注文住宅で素敵なデザインにするコツは
迎賓館赤坂離宮には、和のおもてなしができる建築家谷口吉郎が設計された和風別館「游心亭」があります。
今回、日程が合わず予約できなかったので、また東京へ行く機会がありましたなら見学しブログに書いてみたいと思います。
最後までお読みいただき感謝いたします。
あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせる家が建てられますように。
・ブログを書いている設計士の紹介
田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士
建築設計事務所「ライフホーム設計」代表
*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。
(建築実績100棟以上、現在も月に2,3棟の間取り設計に関わる)
貴方の想いをカタチに、一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。
詳しいプロフィールはコチラ
ここから設計事務所のCMです。
(私は、住宅の設計が本業です。)
・北海道札幌の設計事務所「ライフホーム設計」のこと
あなたの「思い」を「かたち」に「一緒に作る」注文住宅。
対話を大切し、住みやすい間取りのオシャレなデザイン住宅を作ります。
北海道の札幌市近郊のの一戸建て、新築、建て替えの平屋建て、二世帯住宅など注文住宅の間取りのお悩みは、「ライフホーム設計」で個別相談を!(初回相談は無料)
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