老後も後悔しない!50代から考えるシニア向けバリアフリーの間取り③~照明計画編~

注文住宅の打ち合わせで、照明計画は間取りや設備に比べて後回しになりがちです。

しかし住んでから「暗くて不便」「スイッチの位置が悪い」と気づいても、簡単には直せません

今回は老後に後悔しないポイントを、北海道札幌市の1級建築士がお伝えします。

夜、足元灯がある明るい廊下を歩く人

シニア向けの間取りシリーズのパート①・②もあわせて参考にしてみてください。

▶ パート①はこちら:老後も後悔しない!50代から考えるシニア向けバリアフリーの間取り①~介護動線とバリアフリー編~

▶ パート②はこちら:老後も後悔しない!50代から考えるシニア向けバリアフリーの間取り②玄関・外構編


 

1.照明計画はなぜ重要なのか

住んでから気づく照明の失敗

照明計画の失敗で多いのは次のようなケースです。

  • キッチンの手元が暗くて料理がしにくい
  • 廊下やトイレが暗くて夜中に不便
  • スイッチの位置が悪くて部屋に入るたびに不便
  • ダウンライトの位置が悪く、座ると影になる
  • 照明の数が少なすぎて全体的に暗い

新築時に少し意識しておくだけで、こうした失敗を防ぐことができます。

暗い廊下を歩く人

 

 

老後は照明の重要性がさらに高まる

加齢とともに目が暗さに慣れるまでの時間が長くなり、薄暗い場所での転倒リスクが大幅に高まります。

また老眼が進むと手元の細かい作業がしにくくなります。

高齢者が自分で安心して動ける家にするために、照明計画はとても重要なポイントです。

老眼で新聞が読みずらそうな男性

 

 

自然光も大切に

昼間は照明がなくても自然光で明るく過ごせるよう、窓の位置や大きさも合わせて計画しておきましょう。

日中から照明に頼らずに済む間取りは、老後の生活にも快適です。

宮殿の大きな窓のある階段

昔の建物は、大きな明るい窓のある階段が多かった。


 

 

2.場所別の照明計画のポイント

部屋全体は「均一に明るく」を意識する

最近人気のダウンライトやスタンドライトで部屋に明暗をつけるホテルライクな照明は、おしゃれな雰囲気が魅力ですが、高齢者には不向きです。

部屋の中に明るい場所と暗い場所が混在していると、目が順応できずに転倒リスクが上がります。

ホテルライクな部屋

高齢者の方がいるご家庭では、部屋全体を均一に明るくする照明計画をおすすめします。

ホテルライクな照明にする場合でも、将来のことを考えて今は使わなくても部屋全体が均一に明るくなるよう、あらかじめ配線だけ準備しておくのもひとつの方法です。

また光が直接目に入らないよう、照明器具の向きや位置にも気を配りましょう。

スタンドライトがまぶしい取調室の様子

 

寝室

寝室の照明は明るすぎると眠りにくくなります。

メインの照明は調光できるものにしておくと便利です。

リモコン付き照明器具

ベッドからスイッチまでの距離も確認しておきましょう。

遠すぎる場合はリモコン付きの照明器具を使うか、枕元にもスイッチを設けておくと便利です。

リモコンをよく紛失する方は、枕元のスイッチの方が安心です。

眼鏡を探す人

 

廊下・トイレ・玄関

転倒事故が多い廊下・トイレは、適切な明るさを確保しておきましょう。

センサーライトにしておくと自動で点灯するためスイッチを探す必要がなく、消し忘れも防げます。

特に高齢者は付け忘れ・消し忘れが増えてきますので、センサーライトはとてもおすすめです。

玄関もセンサーライトにしておくと、荷物を持ったままでも自動で点灯して便利です。

玄関のセンサーライトのイメージ図

 

 

屋外照明

玄関アプローチや駐車スペースの照明も重要です。

夜間の帰宅時に足元が暗いと転倒リスクが上がります。

センサーライトにしておくと防犯にもなります。

泥棒に反応したセンサーライト

 

 

3.夜間移動を安全にする照明の工夫

高齢になるとトイレが近くなり、夜中に何度も寝室とトイレを往復することが増えます。

そのたびに主照明をつけると明るすぎて目が覚めてしまい、朝まで眠れなくなることがあります。

パートナーの眠りを妨げてしまうこともあります。

夜間の移動を安全に、そして眠りの妨げにならない照明の工夫をご紹介します。

 

フットライト(足元灯)を動線上に設ける

寝室から廊下・トイレへの動線上にフットライト(足元を低い位置から照らすライト)を設けておくと、夜間の移動が格段に安全になります。

足元だけをやさしく照らすため、強い光の刺激を受けずに眠りの妨げになりません。

後付けのコンセント差し込み型もありますが、新築時に計画しておくと壁に埋め込んだすっきりしたタイプにすることができます。

廊下のフットライト

 

人感センサー付きは夜間移動に最適

人に反応する人感センサーは、暗闇でスイッチを探す必要もなく自動で点灯しますので、夜間の移動にとても便利です。

人感センサーには単独のものと、照明器具に組み込まれているものがあります。

玄関など1か所だけに設置する場合は、照明器具に組み込まれているタイプの方が配線も少なく安価に済みます。

夜の廊下

廊下など距離がある場合は、廊下にセンサーを設置しておくと反応した際に廊下全体の照明が一度に点灯しますので、安全に移動することができます。

なお人感センサーには防犯向けにすぐ100%点灯するタイプと、ゆっくり明るくなる調光タイプがあります。

用途に合わせて選びましょう。

人感センサーの調光モードの説明

 

 

ちょっとアドバイス1・夜間移動は調光タイプがおすすめ

調光モード付きの人感センサーと照明器具を組み合わせると、暗くなるとほのかな明かりで待機し、人が近づくとゆっくり明るくなります。

目が覚めすぎないちょうどよい明るさで照らしてくれるため、廊下の移動やトイレには最適です。

また昼間は明るくなると自動で消灯しますので、消し忘れの心配もありません。

調光モードの説明図

製品機能について 人感センサー モード説明 | お客様サポート | 大光電機株式会社

なお現在、調光モードが組み込まれたフットライト(足元灯)の器具はありませんので、電気配線の設計の際には注意が必要です。

 

ちょっとアドバイス2・リフォームの場合はLED化を

今回は新築を中心にお伝えしていますが、リフォームの場合は電球交換の不要なLEDに変えておくのもおすすめです。

高齢者だけの家では、自分で交換できない高い位置の照明が切れたまま暗い中で生活しているケースも多くあります。

LEDにしておくことで長寿命になり、交換の手間が大幅に減ります。

年配の男性が脚立に上がって電球交換する様子。




4.照明の色の選び方

照明の色によって、暮らしやすさは変わります。

まずは4種類の色の特徴を見比べてみましょう。

 

LEDライトの色の種類と特徴

LEDライトの色は一般的に「電球色」「温白色」「昼白色」「昼光色」の4種類があります。

照明の4つの色の違いが分かる画像

LED電球の選び方 | LED電球・蛍光灯 | Panasonic

光の色 色味 雰囲気・印象 おすすめの場所
電球色 オレンジがかった暖色 温かみがありリラックスできる リビング・寝室・和室
温白色 電球色と昼白色の中間 自然な明るさで使いやすい リビング・ダイニング
昼白色 白に近い自然な色 明るく見やすい キッチン・洗面所・書斎
昼光色 青みがかった白色 クリアで集中しやすい 書斎・作業スペース

 

 

 

老後は見やすさを優先した色選びを

電球色は温かみがありリラックスできますが、老眼が進むと手元が見えにくくなることがあります。

調理や読み書きをする場所は、蛍光灯の色に近い昼白色の方が見やすいという方も多いです。

電球色と昼白色の色の違いが分かる画像

「電球色」「昼白色」「昼光色」とは?LEDライトの種類と正しい選び方 | UP LIFE | 毎日を、あなたらしく、あたらしく。 | Panasonic

実際に学校の先生を退職された方が「教室と同じ蛍光灯の色の方が字が読みやすい」という理由で、家全体を昼白色にされたケースもありました。

見えにくさが転倒などの事故につながることもありますので、老後は見やすさを優先した色選びも大切です。

電球色温白色昼光色に切り替わる図とスイッチ

光色切替|住宅用照明器具 | Panasonic

最近は調光・調色機能付きの照明も増えており、時間帯や用途に合わせて色と明るさを使い分けることもできます。

リビングなど長時間過ごす部屋には特におすすめです。

5色の色のスーパー戦隊

色にはそれぞれ特徴があります。


 

5.照明スイッチとコンセントの計画

スイッチの位置と高さ

スイッチはドアや家具の陰にならず、開けてすぐ手が届く位置に設けましょう。

スイッチの位置が悪い間取りの例

 

廊下など生活動線の途中にあるスイッチは、なるべく移動の流れを妨げない位置に計画しておくと使いやすくなります。

なお廊下は前の章でお伝えしたとおり、人感センサー付きの照明がおすすめです。

スイッチを操作する必要がなく自動で点灯・消灯しますので、消し忘れの心配もありません。

センサー付き照明がある廊下

センサ付スイッチ(かってにスイッチ) | スイッチ・電気設備 | 住まいの設備と建材 | Panasonic

 

スイッチの高さ

標準的なスイッチの高さは床から約120cmですが、高齢者や車いすの方には床から90〜100cmが使いやすいです。

ただし下地の組み方の関係で対応できない場合もありますので、工事店に確認しておきましょう。

高齢者のスイッチの良い高さの図

パナソニックhttps://www2.panasonic.biz/jp/densetsu/haisen/keikaku/re-swt/faq.html

 

コンセントの位置

コンセントの位置が悪いとコードを床に這わせることになり、転倒の原因になります。

各部屋に十分な数を、使いやすい位置に計画しておくことが大切です。

またコンセントの数が少ないとタコ足配線になりがちで危険です。

電源コードに足を引っかけたおばあさん

 

コンセントの高さ

コンセントの高さは標準で床から約25cmですが、高齢者には少し高めの40〜45cmが使いやすいです。

高齢者が使いやすいコンセントの高さの位置図

詳しい照明スイッチの計画については以下のブログも参考にしてみてください。

▶ 参考ブログ:注文住宅で後悔しない電気配線、照明③~スイッチで失敗しない






 

まとめ

  • 照明計画は間取りと同じくらい大切。住んでからでは簡単には直せない
  • 昼間は自然光を取り入れる窓の計画も大切
  • 部屋全体は均一に明るくし、明暗のムラを避ける
  • 寝室はベッドからスイッチの距離を確認。枕元スイッチやリモコンも有効
  • 廊下・トイレ・玄関・屋外はセンサーライトで自動点灯が便利で安全
  • フットライトを寝室〜トイレの動線上に設けると夜間移動が安全に
  • 夜間の移動には調光タイプの人感センサーがおすすめ
  • 高齢者の照明の色は見やすさを優先。調光・調色機能付きも便利
  • スイッチは生活動線上に。高さは90〜100cmが高齢者には使いやすい
  • コンセントは十分な数と適切な位置に。タコ足配線とコードの床這いは転倒の原因に
  • リフォームの場合はLED化で電球交換の手間を減らす

 

照明は家の雰囲気をつくるだけでなく、毎日の暮らしの安全と快適さに直結します。

ぜひ新築計画の早い段階から照明も一緒に考えてみてください。

 

シリーズ全体のまとめ

今回で「老後も後悔しない!50代から考えるシニア向けバリアフリーの間取り」シリーズはひとまず完結です。

バリアフリー・介護動線、玄関・外構、そして照明計画と、3回にわたってお伝えしてきました。

各回の内容は単独で考えるよりも、組み合わせることでより効果を発揮します。

例えば夜間のトイレ移動ひとつとっても、手すり・スイッチの位置・照明の明るさをセットで考えることで、より安全な暮らしが実現できます。

よく考えて計画しておくことで、将来の安心と毎日の暮らしやすさが大きく変わります。

ぜひ参考にしてみてください。

 

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田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士

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*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。

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