軍艦島、日本最古の高層コンクリート住宅~有名な建物を見学しました、9

 

コンクリート建築から見た歴史の島

 

札幌でコンクリート住宅の設計も行っている私が、かねてから訪れたかった長崎の「軍艦島」に足を運ぶ機会を得ました。

軍艦島(端島)は、日本の近代化を象徴する遺産であり、同時にコンクリート建築の歴史的な記録でもあります。

今回はその様子をお伝えしたいと思います。

 

軍艦島遠景

目次

1,軍艦島とは?

2,日本最古の鉄筋コンクリートの高層アパート

3,上陸した軍艦島で見たもの~息づく建物

4,メンテナンスの重要性

5,最後に~軍艦島を見て思うこと

 

竜馬像

 

 

 

1,軍艦島とは?

 

・軍艦島の歴史

 

軍艦島は、正式名称を「端島」と言い、長崎港から18キロほど沖合いにある小さな島です。

この島は、1870年代(明治初期)から三菱によって海底炭鉱の開発が始まりました。

石炭が日本の主要エネルギーの時代で、需要があり島は大いに栄えました。

 

軍艦島の位置

軍艦島デジタルミュージアムのパネルより https://www.gunkanjima-museum.jp/

 

 

・ユネスコの世界遺産に

 

1974年(昭和49年)に国のエネルギー方針が、石油へと転換され、炭鉱は閉山し無人島となりました。

炭鉱は、その後2015年(平成27年)に、明治日本の産業革命遺産としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。

 

軍艦島の空からの写真

 

 

 

2,日本最古の鉄筋コンクリートの高層アパート

 

・RC建築の先駆け

 

軍艦島は、20世紀初頭に日本で初めての鉄筋コンクリート構造の高層アパートが建てられました。

最盛期には、幅160m、長さ480mの小さな島の中に、5000人ほどの人が暮らしていたそうです。

これは東京の9倍と言われ、「世界一の人口密度」の島と言われていました。

 

軍艦島ミュージアムの写真

 

高層アパートが出来たのは、狭い島に効率よく住まいを提供するためだったと言われています。

高層RC建築は、当時の日本では非常に先進的なものでした。

ちなみに RCとは、鉄筋コンクリート造(Reinforced Concrete Construction)の略です。

 

 

 

 

3,上陸した軍艦島で見たもの~息づく建物

 

・軍艦島上陸ツアーに参加

 

令和6年11月16日に、軍艦島上陸ツアーに参加しました。

夏ごろ申し込みました。

現在はテレビドラマの影響で、土日は普通のコースでも3週間先まで予約が取れないお話でした。

 

海に眠るダイヤモンドのドラマのポスター

 

日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』|TBSテレビ

 

 

・長崎港から出港

 

軍艦島コンシェルジュの船

軍艦島コンシェルジュ https://www.gunkanjima-concierge.com/

 

ツアー船は長崎港から出港しました。

軍艦島と同じく世界遺産に登録された「三菱長崎造船所、ジャイアント・カンチレバークレーン」などの前を通過して向かいます。

 

三菱長崎造船所 ジャイアント・カンチレバークレーン

 

 

・軍艦島の生活を聞きながら向かう

 

出発前の軍艦島ミュージアムと到着までの船内で、元島民の方やツアーガイドさんから軍艦島の生活について話がありました。

いくつかお伝えします。

放送されているドラマでは、毎回、事件があるように描かれていましたが、まったくそんなことはなく平和な島であったとのこと。

そのため、島に交番があったものの留置所にカギがかけられることはなかったとの話でした。

 

古いテレビ

 

これは島民の暮らしが豊かであったことがあるそうです。

どれくらい豊かであったかというと、当時テレビが高価(現在の値段だと1台あたり65万円)で日本のテレビの普及率が10%だったのに対し、島ではほぼ100パーセントの普及率であるくらい島民はお金があったとの話でした。

またドラマのエピソードで、映画のフィルムが高波で流されたが戻ってきた話は、実際は映写技師が流され戻ってきたとのことでした。

 

今回、参加した船のキャラクター「ガンショウ君」

元島民の方やガイドいただいた方々は、非常に分かりやすい説明でした。

 

 

 

・海からの軍艦島の姿

 

船が島の近くまで行くと展望デッキに案内され、全体の姿を見せていただきました。

外観が軍艦のように見えることから「軍艦島」と呼ばれるようになったとのことでしたが

確かに戦艦のように見えます。

 

デッキからの軍艦島

 

島を旋回

 

軍艦島全景

 

島の周りを旋回しました。

 

軍艦島の小中学校

左が端島小中学校、右が端島病院

 

軍艦島の映画館

右が31号棟、中央に映画館がありましたが、現在は倒壊しています。

 

 

・軍艦島へ上陸

 

船が停船所まで近づいてきました。

 

軍艦島の岸壁

 

この岸壁も世界遺産。

波は天気が荒れると、この岸壁も乗り越えることあるとのことです。

 

軍艦島の岸壁 世界遺産

 

上陸ツアーに申し込んだ際、天候によって上陸できないこともあるとのことでしたが、運よく当日は波も少なく、無事、軍艦島に渡れました。

ガイドさんの話によると、今年の台風シーズンは40日間上陸できなかったとのことでした。

 

筆者

無事、上陸!

 

 

・生き物のようなコンクリート

 

コンクリートの建物というと、一般的にはクールで都会的な印象かと思います。

しかし、軍艦島のコンクリートの建物群は、島と一緒に生きている感じがしました。

年数もたっているコンクリートの建物群は、荒涼とした寒々しい感じがすると思っていましたのでちょっと意外でした。

 

軍艦島の見学広場の様子

軍艦島 第1見学広場

 

 

・建物が防波堤の役割

 

30号棟と31号棟

 

左に見える6階建てのアパートが船からも見えた6階建ての31号棟で、防波堤の役割をしていたそうです。

台風のシーズンなどは屋上まで波が来たそうです。

(面白いエピソードを聞きましたが、美しい話ではないのでメルマガに書きます。)

 

 

 

・日本最古の鉄筋コンクリート造の高層アパート

 

先の写真の右側の建物が、1916年大正5年に建築された7階建てアパート30号棟です。

この建物が、軍艦島で一番古い鉄筋コンクリートの高層アパートです。

日本最古の高層アパートになるため、貴重な建築物になります。

 

別な角度の30号棟

 

別な角度から見ると、屋根や床や外壁などが無くなってしまっています。

 

 

4,メンテナンスの重要性~むき出しの鉄筋、劣化したコンクリート

 

・劣化してゆく建物たち

 

ガイドさんの話では、3年前と現在では建物の壊れ具合が違うそうで、年々劣化してゆくスピードが速くなっているとのことでした。

 

劣化したコンクリート

 

 

・風化が進んだコンクリート

 

軍艦島のコンクリートは海砂と海水で作られていました。

コンクリートに塩分があると、中にある鉄筋が酸化して錆(さ)びやすくなります。

島のコンクリートは塩分があるため、普通のコンクリートと比べ、早く劣化が進んでいるのではないかと言われています。

そのため、いろいろなところで鉄筋がむき出しになったところが見られました。

 

むき出しの鉄筋

30号棟が建築された18年後の1933年に、コンクリートは海水の使用が禁止になりました。

現在のコンクリートは、塩分に対する規制が厳しくなっています。

 

コンクリートの打設の様子

コンクリートを流している様子。

鉄筋は、アルカリ性のコンクリートにより酸化することを免れて、錆(さ)びずらくなっています。

酸性

酸性しないことに賛成(笑)

 

 

 

・メンテナンスの重要性

 

軍艦島の建物は、痛みが激しく、今後、維持してゆくのには問題が多いように感じられました。

私も鉄筋コンクリート造の住宅を多く設計し建築してきており、ユーザー様からの建物の維持管理のご相談も多くいただきます。

長年点検もせず、メンテナンスもしていない建物は、傷んでいることが多く見受けられます。

この場合は、かなりの修繕費がかかってしまします。

逆に定期的にメンテナンスを行っている建物は痛みが少なく、修繕費も安くなっています。

 

自宅の屋根の防水

 

屋根の防水

自宅の屋根は、自分でメンテナンスしました。

 

建物は住まないと悪くなるといわれますが、逆に手をかけると寿命が伸びるように思います。

建築士など建築に詳しい方に定期的に見てもらうのが、長く住み続けるポイントかもしれません。

 

メンテナンス

体だけでなく、建物も定期的に点検を!

 

 

 

5,最後に~軍艦島を見て思うこと

 

 

軍艦島は、むき出しになったコンクリートや錆びた鉄筋が目立ち、劣化が進んでいることが伺えます。

これを安全な状態で保存し続けるには、多くの課題が残されているように思えました。

しかし、その建物は決してきれいとは言えませんが、長い時間と自然の力によって生まれた独特の美しさを持っています。

それは、かつての島民たちの生活や建物への深い愛情が感じられるようなものでした。

 

軍艦島とブログを書く設計者

 

ふと、以前聞いたあるミュージシャンの話を思い出しました。

その方は札幌のコンサートホール「厚生年金会館」が取り壊される前に、「音楽ホールには過去の演奏者たちの想いと音が染み込んでいる。そんな歴史ある建物が消えてしまうのは非常に残念だ」と語っていました。

この島の建物が示しているように、建築はただの形あるものではなく、そこに生きた人々の記憶や感情を抱き続ける器ではないかと思われます。

この軍艦島の建物を目の当たりにし、私もまた、人々が愛情を注げる住宅を設計したいという思いを新たにしました。

 

 

・関連ブログもどうぞ

 

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最後までお読みいただきまして感謝いたします。

今回のブログが、みなさまの住まいの参考になりましたなら幸いです。

あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせる家が建てられますように。

 

 

・ブログを書いている設計士の紹介

 

打ち合わせの様子

田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士

建築設計事務所ライフホーム設計」代表

*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。

(建築実績100棟以上、現在も月に2,3棟の間取り設計に関わる)

貴方の想いをカタチに一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。

詳しいプロフィールはコチラ

 

 

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「ライフホーム設計」の設計士の「田中昭臣」と申します。 設計スタイルを押し付けることなく、お施主様との対話を重ねて、住みやすい家を造れるよう日々努力しています。 簡単な自己紹介 昭和38年(1963年)に札幌市の生まれ。 就職まで父の仕事の...




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