鈴木大拙館は、金沢の兼六園近くに建つ、世界的に有名な「鈴木大拙」氏の思想に出会える場所です。
また建築家「谷口吉生」さんが設計された、水庭のある素敵な建物です。
今回は、鈴木大拙館の魅力についてお伝えいたします。
1,鈴木大拙さんとは
鈴木大拙(すずきだいせつ)さんは、仏教哲学者で世界的に「禅」の思考を世界的に広めました。
海外ではD.T.Suzuki と呼ばれ、高く評価されています。
特にアップルの「スティーブ・ジョブス」は大学時代に、彼の「ZEN」の思考に出会い大きく影響を受けたと言われています。
ちなみに鈴木大拙さんは、金沢出身で、生家は、この文化施設のすぐそばあります。
鈴木大拙館のパンフレットより
2、建物の概要
・周辺の環境~建物までは小径で繋がっている
建物は、金沢らしいきれいな緑の森の中にありました。
兼六園側から徒歩で行くと、都心近くなのに、森の中にいるような感覚になります。
建物へは、石川県立美術館側の小さな滝が流れている辰巳用水分流を見ながら、少し開けた「美術の小径」「緑の小径」という細い曲がりくねった遊歩道を通ってゆきます。
北海道の札幌では見ない竹林もありました。
そして、さらに進むと、コンクリートの塀にぶつかります。
そこに、人が通れるだけの切れ目があり、ちょっと覗いてみると水を張った浅いプールが、広がっていました。
間違って人の庭に迷い込んだ感覚で面白かったです。
そこから先は、コンクリートの塀の外側と内側を回って、建物のエントランスまで向かうようになっていました。
・鈴木大拙の言葉と環境を生かした設計に
鈴木大拙館の設計は、鈴木大拙の言葉「静か」「自然」「自由」にふさわしい環境と、「思索」「くつろぎ」「語らい」のが出来ることを目的としたそうです。
・3つの棟に分かれている。
鈴木大拙館は「玄関棟」「展示棟」「思索空間棟」の3つの棟が回廊で結ばれています。
またそれぞれの棟に「玄関の庭」「露地の庭」「水鏡の庭」と3つの庭があります。
これらを回遊することによって、鈴木大拙について知り、学び、そして考えることが出来るようなっています。
・玄関棟はシンプル
玄関棟は、来館者の受付などの機能を持っており、周りの風景に合うようにシンプルな縦格子の外観になっています。
・玄関棟の内部と庭
玄関棟は受付を過ぎると、展示棟に続く回廊があります。
回廊は、鉄筋コンクリートの打ちっぱなしの壁とグレーに塗装された壁の飾りのない空間になっていました。
玄関棟と展示棟の回廊の中間に「玄関の庭」見える場所があります。
・展示棟は落ち着いた空間
展示棟は最大規模を誇る建物で、鈴木大拙さんの書や写真、作品などが多く展示されています。
こちらの建物は「露地の庭」に面しており、書籍を読むことができる学習空間がありました。
こちらの棟は撮影禁止となっており、画像はありませんが、玄関棟と同じくシンプルで落ち着きのある空間になっていました。
画像の奥が展示棟、右が玄関棟の外観。
・特長的な「水鏡の庭」と「思索空間棟」
展示棟を出ると、水を張った大きな人工池に、白い壁と大きく張り出した庇が特長の「思索空間棟」が建っています。
水鏡の庭と呼ばれるように、水に映った建物や緑が美しく見えるようになっていました。
とても、静寂のある落ち着いた雰囲気になっています。
静かな時間が流れていると、時々小さい音がして、水面に波紋が起きるようになっています。
「ちょっとした思考の変化のきっかけを」というメッセージのように感じられました。
余談ですが、鈴木大拙館で感心したこと
ちょっとここからはマニアックなのですが、鈴木大拙館で感心したことがあります。
それはコンクリートの塀の作り方です。
コンクリートの塀を作ると、上部に水が溜まって、早く劣化してきます。
特に、北国では雪が載っている期間も長く、何もしないとボロボロになってきます。
鈴木大拙館のコンクリートの塀は、水が流れやすくするための溝があり、艶のある塗料で全体が美しく仕上げられていました。
我々も左官や塗料で劣化しないようには行うのですが、細かいところまで考えられているなと感心しました。
3,設計した谷口吉生さんとは
・金沢ゆかりの建築家
谷口吉生氏は1937年生まれで、金沢市出身の建築家、「谷口吉郎」さんの息子さんです。
まずは、お父さんのことについて。
・父「谷口吉郎」も有名な建築家

上の写真は、東京上野にある「東京国立博物館東洋館」。
下が、鈴木大拙館の近くにある石川県立美術館
・「谷口吉生」の設計の特長、主な作品
建築家「谷口吉生」さんは、鈴木大拙館のように、きれいな水平と垂直を生かしたデザインが特長です。
また、庭や周りの環境と建物を美しく調和させるのも特長かもしれません。
代表作に葛西臨海水族園、東京博物館「法隆寺宝物館」、豊田市美術館などなど数多くの作品があります。
下の画像は、東京上野にある 東京博物館「法隆寺宝物館」です。
鈴木大拙館の水鏡の庭と同じく、建物の前に水を張った浅いプール「人工池」があります。
内部は直線的な垂直と水平が美しい空間になっています。
・「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」
鈴木大拙館から1.5kmくらい離れた場所に「谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館」があります。
谷口吉郎さんの住居跡地に、谷口吉生さんが設計し2019年に開館しました。
残念ながら金沢に行った日は、展示替えの期間で休館中でした。
建築と都市をテーマとした施設で、館内には、吉郎さんが設計した迎賓館赤坂離宮和風別館「游心亭」の主和室と茶室が忠実に再現されいるそうです。
2024年12月に吉生さんは亡くなられました。
今月、金沢市でお別れの式があり、300人の方々が参列されたそうです。
4,最後に
・鈴木大拙館の所用時間など
見学の所要時間とすれば20,30分くらいでしょうか。
時間に余裕があれば、景色を見ながら1,2時間ゆっくりいろいろ思考してみるのも良いかもしれません。
場所が、石川県金沢市本多町3丁目4番20号になります。
ブログに書きましたが、石川県立美術館側から、自然豊かな「辰巳用水分流」の滝や、「美術の小径」らを通ってゆくルートがお勧めです。
・観光スポットとしてもおすすめ
禅というテーマを、簡潔にまとめあげたこの施設は、かなりの傑作ともいえます。
谷口吉生さんは、鈴木大拙館の設計が一番難しかったと過去にコメントを残されているくらい考えられている建物です。
建築の専門知識がなくても、谷口吉生さんのつくる空間が自然と心を整え、深い静寂に誘ってくれるのを実感できます。
金沢観光の際はぜひ、鈴木大拙館で“建築を通した静かな対話”を楽しんでみてください。
・今回の関連ブログも是非どうぞ!
・吉生さんが師事していた丹下健三さんの建物のブログ

・丹下健三の師匠「前川圀夫」さんのブログ

・父「吉郎」さんが赤坂離宮迎賓館の和風別館を設計されました。

・コンクリートの仕上げを劣化させない方法

今回のブログが、みなさまの住まいの参考になりましたなら幸いです。
あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせる家が建てられますように。
ここからCMです。
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田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士
建築設計事務所「ライフホーム設計」代表
*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。
(建築実績100棟以上、現在も月に2,3棟の間取り設計に関わる)
貴方の想いをカタチに、一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。
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