日本の家屋(本州)は、欧米と比べ、冬はとても寒いです。

注文住宅を建てる際、オープン階段や吹抜けなど、開放的な設計の間取りにする場合は、断熱や暖房をしっかりしないと寒くて後悔、失敗してしまいます。

また、北海道も、明るい開放的な空間を作る場合も、建物の断熱性能に注意が必要です。

オープンなリビング階段

 

目次、

1、「体に優しい住宅」と「我慢する住宅」

2、室温が低い家は、健康のリスクが大きい

3、欧米(北海道)は断熱化、本州は「日本の家屋は夏をむねとすべし」という2つの考え。

4、断熱した住宅のメリット、デメリット

5、断熱設計のポイント

6、暖房のこと

7、開放的な間取りプランは、断熱とのバランスが大切

8、開放的な間取りの際の、ワンポイントアドバイス

まとめ

 

1、「体に優しい住宅」と「我慢する住宅」
冬の東京は、北海道(寒冷地)と比べると、建物の中は寒い

まだ、新型コロナが猛威を振るう前の1月、2月に、東京と仙台に行ってきました。

外気温は,北海道と比べ高いのですが、建物の中は、寒く感じられました。

暖房があっても、あまり温かく感じられませんでした。

 

・本州の家は、部屋ごとの暖房で、洗面所、浴室は寒い

本州の住宅は、各部屋ごとの個別暖房が多く、洗面所、浴室、トイレとの温度差があります。

北海道の全室暖房に慣れていると、暖房のない部屋にくると、とても辛く感じます。

コタツ

 

・北海道と比べ、窓から聞こえる音も大きく、窓辺も寒い

少し古いビルやホテルに行くと、外の車の音などが札幌より大きく聞こえます。

また、窓付近も寒く感じられます。

これは、窓が、北海道はアルミサッシではなく、気密の良い樹脂サッシを使用しているから、違いがあるのだと思われます。

 

・東京はパリに、仙台はベルリンと似た気温なのに、日本は寒い家で、我慢して住んでいる

冬の平均気温は、東京はパリに、仙台はベルリンに似た気温になります。

欧米は、北海道と同じく、冬は断熱された全室暖房の暖かい家に住んでいます。

本州は、冬の寒さを我慢して生活しています。

素敵なデザインの建物が多いのに、ちょっと残念な気持ちになります。

 

ちなみに

北海道民は、北海道以外の日本を「内地(ないち)」と言うのですが、うっかり、東京で「内地」と言うと「いつの生まれよ」と言われてしまいます。(笑)

*仙台では「ゴミなげて」は通じた。(「なげる」とは「投げる」ではなく「捨てる」と言う意味)

投げる

「なげる」にはこちらの意味も(笑)

 

2、室温が低い家は、健康のリスクが大きい
・室温が18度以下だと、体に悪く不健康。

冬の室温の適温は、21度と言われています。

18度以下だと、体調を崩しやすいと言われています。

 

・肺炎は、室温16度以下でのリスクが大
新型コロナウイルスで、よく目にするようになった肺炎の呼吸器系疾患は、イギリスの報告では、16度以下でリスクが大きくなります。

イギリスの室温による肺炎のリスク

資料、住宅の断熱リフォームと健康の関係 〜国⼟交通省スマートウェルネス住宅等推進事業調査から〜

 

・ヒートショックによる死亡も

部屋間の温度変化によって、血管の収縮による原因のヒートショック現象で、死亡事故が冬場おこりやすいと言われています。

多いパターンが、暖かいリビングから、暖房の無い洗面所へ行き、床の冷たい風呂の洗い場から、熱い湯舟に入ると、血圧が急に低下してしまい、意識を失って溺死してしまうのだそうです。

 

浴室での住宅事故

統計では、日本の高齢者が特に多いです。(交通事故の倍と言われています。)

浴槽

 




3、欧米(北海道)は断熱化、本州は「日本の家屋は夏をむねとすべし」という2つの考え。
・欧米(北海道)と日本の住宅の考えは、1970年代のオイルショックの時に分かれた。

1970年代にオイルショックが来るまで、家は無断熱で、灯油をガンガン焚いて冬を過ごしていました。

ところが、石油が高騰し、ストーブが焚けなくなると、北海道や欧米は家を断熱化する方向に向かいました。

一方、本州では「日本の家屋は夏をむねとすべし」という昔から涼しい家造りの考えを変えず、冬の寒さは我慢して生活するようになりました。

東日本大震災から、本州でも、省エネルギー対策ということで、建物の断熱化が始まりましたが、住宅性能は、欧米と比べて、遅れてしまいました。

 

 

夏の生活

日本は、高温多湿という面もありました。

少々の我慢なら良いのですが、この近年の猛暑だと、考えを変えないとなりませんね。

 

参考までに

・海外の窓による断熱の違い

室内の熱は、窓ガラスから逃げやすいので、海外では高断熱の窓が使用されています。

近年まで、日本と欧米の新築の建物は、4倍近い性能の違う窓が、使用されていました。

 

下の図を作ったのですが、見づらいので飛ばして読んでも良いですよ。

窓ガラスの断熱性能の違い

熱貫流率とは、熱の伝えやすさを表したもので、数値が大きくなるほど、熱が逃げるので断熱性能が悪いということです。

欧米や北海道は、樹脂サッシの複層ガラスが30年以上前から主流でしたが、本州では、断熱が悪いアルミサッシが使用されていました。

窓の性能が悪いと、部屋で暖房しても、どんどん熱が逃げて行ってしまいます。(冷房の熱も)

5重のガラスの断熱サッシ

*日本でも5重のガラスの断熱サッシが発売されました。

LIXIL リガリスhttps://www.lixil.co.jp/lineup/window/legaris/

 

ちなみに、

20年前に、小樽の人が千葉で家を建てる方がいて、千葉で樹脂サッシの見積もりを取ると、北海道の3倍くらい値段がして、びっくりした思い出があります。

北海道で買って、船で、千葉に送ったほうが安いので、メーカーの人に聞いたら、ダメと断られました。(笑)

小樽運河

またまた、ちなみに

・欧米、北海道は、引き違い窓は使用しない

最近、本州でも樹脂サッシの複層ガラスが増えてきましたが、窓の開き方は引き違いが主流です。

ただ、引き違いは、構造上、隙間がないと窓がすれ違うことが出来ないので、気密性が落ちます。

北海道では、気密性の高い縦すべり出し窓が使用されています。

引き違い窓を採用する場合は、プラストサッシなどを併用することがあります。

縦滑り出し窓

 

ドイツでは、ドレーキップ窓(内倒し窓)が主流のようです。

ドレーキップ窓

ドレーキップ窓

(網戸が常時、はめ込みになるのが、ドレーキップ式は日本ではデメリット)

札幌大通公園のミュンヘンクリスマス市

札幌とドイツのミュンヘンは、オリンピックが同じ年に開催された縁で姉妹都市に。

毎年、ホワイトイルミネーションの頃、ミュンヘンクリスマス市が、大通公園で開催されます。

 

 

・日本以外では、断熱の審査があり、適合しないと建築できない

欧米は断熱基準があり審査で基準を満たしていないと建築できないようになっています。

中国や韓国でも、審査されています。

 

・日本では今年2020年から、努力義務の目標

日本は、今年4月から一般住宅(300㎡(約90坪)以下)に、努力義務という目標がようやく出来ました。

努力目標なので、建築不可とか罰則はありません

現在は、信頼できる設計事務所や住宅メーカーを、オーナー様ご自身で探さなければならない状況です。

検討している人

 


、断熱した住宅のメリット、デメリット

住宅省エネルギー技術講習テキスト

令和元年に受講した「住宅省エネルギー技術講習」からの抜粋

*ここも、難しければ飛ばしてお読みください。

 

断熱をした住宅とのメリット、デメリットを書いています。

冬の北海道向けになっていますが、本州の方は、夏の熱気を入れない、冷房エネルギーを無駄にしないことになります。

 

・断熱することによって、体感温度が違ってきます。

断熱した住宅と無断熱受託の違い

・天井と足元の温度差が少なくなります。

断熱されないと温度村が出来る断念図

・部屋と部屋の温度差が少なくなります。

温度差がない家のメリット

ヒートショックになりずらくなり、体に優しい。

ヒートショックのイラスト

 




 

5、断熱設計のポイント
・断熱材で隙間なく、すっぽりと包み込む

断熱住宅

 

・窓などの開口部の断熱性能を高めることが大切

開口部の断熱設計

 

・壁内の結露対策

壁内結露対策

外壁の通気層、気流止め、気密化防湿バリアの対策が必要

前回のブログの宿題、「日本の建物が何故、短命になるか」というと、一つの原因に、誤った断熱の施工で、家が腐ってしまうことがあげられます。

暖かい家

 

6、暖房のこと

欧米では全室暖房が標準です。

アジアでも、中国北部はセントラルヒーティングが義務化ですし、お隣の韓国は、昔からオンドルという床下暖房で生活しています。

北海道も高断熱化された際、セントラルヒーティングなどで全室暖房になりました。

・寒い部屋と暖かい部屋をなくすと、ヒートショックや結露対策になります。

結露する家

 

・洗面トイレなども暖房する全室暖房が、体に優しい

https://www.corona.co.jp/products/ondan/plan/plan03.htmlセントラルヒーティングの計画図

*コロナ温水式暖房システムhttps://www.corona.co.jp/products/ondan/plan/plan03.html

欧米や北海道(寒冷地)で一般的な、温水セントラルヒーティングは、リビングや寝室だけでなく、玄関、洗面、トイレ、廊下などにも暖房器(パネルヒーター)を設置します。

ガスの暖房ボイラー(エコジョーズ)が現在多いですが、ヒートポンプによる床暖房も増えてきています。

像

「だんぼう」のことは、耳をダンボにしてお聞きください(古いギャグですいません)

ちなみに、北海道はコタツを持ってる人は少ないです。




7、開放的な間取りプランは、断熱とのバランスが大切
・せっかくの開放的な間取りが、快適に住めなくて、後悔失敗する恐れが

断熱性能の低い家に、明るく開放的な間取りにすると、冬期間、寒くて暖房の周りでしか、生活できなくなります。

また、家が温まるまで時間がかかったり、暖房費が割高になってしまいます。

せっかくの注文住宅が、楽しく生活が出来なくなってしまします。

 

・注文住宅を建てる場合、予算のバランスが大切

開放感のある間取りの場合は、建築費価格の中で、断熱や暖房など予算のバランスが大切になってきます。

特に北海道では、暖房代がかかりますので、チェックが大切です。

 

バランス

 

8、開放的な間取りの際の、ワンポイントアドバイス
・景色や眺望が良い場合、断熱の良い窓を使用する

大きな窓のある部屋

大きな窓を付ける場合、断熱性能が良い窓を使用すると快適に過ごせます。

熱は、窓から多く熱が逃げるので、大きな窓を取り付ける場合は、断熱性の高いものを選ぶようにしましょう。

 

・熱が上階に逃げやすいオープン階段の間取りなどは、可動間仕切りなどで区切れるようにしておくのも手

リビングと階段室を分けている天井まである扉

オープン階段などは、熱が上階に逃げやすいので、可動間仕切りなどで、区切れるようにしておくのも一つの設計手法です。

 

・断熱が良いと、より積極的な開放空間の住宅が出来る

断熱が良いと、快適な環境になるので、高い天井高やハイドア(背の高いドア)などで、より積極的な開放空間の設計の間取りで、住むことが出来ます。

ハイドアのあるリビング

ハイドア(リクシル「ラフィス」)




まとめ、
・注文住宅は、間取り設計と建物性能のバランスを取ることが大切。

「リビング階段(オープン階段)」「天井の高い大空間」「吹抜け」など開放感のある明るい間取りプランは、注文住宅のランキングでも上位で、人気があります。

冬、日照時間の少ない北海道は、特に、家の間取りは明るく開放的にしたいものです。

でも、住み心地が良くないと楽しく生活ができません。

注文住宅においては、間取り設計と建物性能のバランスを取ることが大切です。

 

最後までブログお読みいただきありがとうございました。

きっと、コストと住み心地のバランスを取るのに、アドバイザー的な設計士がいると良いのかもしれません。

皆様の住まいが、より良くなり、楽しく幸せに暮らせますように。

 

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