2月の中旬に所用で,札幌から仙台に行ってきました。
その際、仙台の有名な建築物を、3棟見てきました。
その中の1棟が移転問題で、解体される話があるそうです。
前川國男氏が設計の「宮城県美術館」
前川國男氏が設計した「宮城県美術館」を見てきました。
この方は、有名な日本の近代建築家です。
世界の3大近代建築家ル・コルビジェの弟子の一人
「世界の建築の3大巨匠」の一人である「ル・コルビジェ」のお弟子さんになります。
(前々回のブログに、コルビジェのことを書いています。https://lifehome-sekkei.com/index.php/2020/02/10/museum/)
戦後の建築家をリードし、後進も育てる
生涯200もの作品を残し、戦後の建築界をリードいたしました。
また、後進も育て、その中の一人に、前の東京オリンピックの代々木第一体育館など設計を行った、建築家「丹下健三」氏がおります。
https://www.jpnsport.go.jp/yoyogi/home/tabid/36/Default.aspx
前川國男氏の自邸は、人気があり、「江戸東京たてもの園」で保存され、内部も見学が出来ます。
(ちなみに、昨年、ブログで書いています。https://lifehome-sekkei.com/index.php/2019/04/11/plan-19/)
宮城県立美術館のアプローチはリズミカル
美術館の道路から玄関までのアプローチに、白い柱の列があって、リズム感があって、ちょっと楽しい感じですね。
何故か、列柱の1本だけ向きが違う
何故だか、列柱の1本だけ向きが違っています。
若干、デザインも違うような。
設計者の遊び心でしょうか。
こういうのは、発見すると面白いですね。
さらに、回廊と中庭がある
玄関までは、コルビジェの設計の特長のピロティ(柱)の回廊があります。
回廊の天井は、湾曲したデザインです。
大きな中庭もあり、イベントにでも使用できそうです。
2週間前に見た前川氏の設計の上野公園の「東京文化会館」と比べ、「宮城県美術館」の方がすっきりとした、長年経っても飽きないデザインになっています。
東京文化会館の外観
前川國男氏の特長の打ち込みタイル工法で、長持ちする外装に
前川國男氏の設計の建物の外装の特長として、「打ち込みタイル」を使っていることがあります。
外壁のタイルは、コンクリートが打ち終わった後に、張ってゆくのが一般的です。
打ち込みタイル工法は、型枠にあらかじめタイルを付けてコンクリートを打つので、くっつきが良くなり、剥がれづらくなります。
ただ、施工的には、コンクリートの打ち込みが難しく、あまり採用されていないやり方です。
前川氏は、長く建物が使えるよう多くの建物にこちらの工法を採用しています。
その為、39年経った現在でも、とてもきれいに仕上がっています。
当時は、モルタルを付けてタイルを張っていたので、剥がれやすかったはずです。
設計者の、建物の補修費用が少なくて、長く使ってもらおうという気持ちがあったと思われます。
(最近のタイル張りは、接着剤などを使用しているので、剥がれづらくなっています。)
内部は、ホールに吹き抜けとトップライトのある間取り
玄関を入ったホールは、大きな吹き抜けがあり、吹き抜けの天井にトップライトがあります。
内部の落ち着いた雰囲気は、どこか師匠のル・コルビジェの「西洋美術館」の感じに似ています。
ゆったりと、楽しむには良い美術館です。
実はいま、この建物が移転の為、解体される話があるそうです。
その話に行く前に。
戦後の昭和の住宅「土井晩翠の家」と平成建築NO.1の「せんだいメディアテーク」も見てきました。
土井晩翠の家「晩翠草堂」
明治時代の名曲「荒城の月」を作詞した仙台出身の土井晩翠(どいばんすい)の家が、宿泊したホテルのそばにありました。
生前の居宅を保存し、見学することが出来ます。
案内する係の人がおり、「仙台の街は、伊達政宗公の計画を基に作られている」ことや、「戦争の空襲で大火」になった話などやさしく教えていただきました。
仙台の人は、やさしく穏やかな人が多く、暮らしやすそうな町の印象です。
小学生の頃、ギターを習いに行ったら、最初の練習曲が「荒城の月」だった思い出が。
子供だったのでメロディに馴染みがなく、ギターを覚えるより、曲を覚える方がたいへんだった。(笑)
平成の代表建築「せんだいメディアテーク」
晩翠草堂が「戦後の昭和の家」なら、この「せんだいメディアテーク」は、近代的な「平成の建築物」です。
設計者は「伊東 豊雄」氏。
外観は全面ガラス張り
13本のチューブ(柱)と7つのプレート(床)で構成された無梁(梁の無い)構造
通常、建物は大きな柱を均等間隔に配置させますが、こちらは、不規則な間隔に細い鉄柱を組み合わせた柱(チューブ)を使った特殊な構造です。
また、梁がない構造です。
私も一度、無梁のRCの住宅の設計をしたことがありますが、構造計算でそれが出来るところはあまり少なく、建築費用もかかります。
この建物は、さらに特殊なので、優秀な構造計算士がいるところだったのだと思います。
海外からの視察も多いとのことです。
閑話休題
宮城県美術館に戻ります。
宮城県美術館を取り壊し、別な場所に新しい美術館を建てる計画
現在、宮城県美術館は、広瀬川そばの美しい丘陵にあり、また東北大学など学校も多い文教地区にあります。
これを別な場所に新築する計画だそうです。
理由は、古い建物は、維持メンテナンス費用がかかることだそうです。
外観も内部もとてもキレイなので、ちょっと驚き
実は、移転する話は知らずに見てきたので、ちょっと驚いています。
とても手入れされていて、古さを感じませんでした。
デザイン的にも、素晴らしかったと思ってみてきました。
また、長く使用できるようにと行った打ち込みタイルも、傷んだ様子もありませんでした。
設計士の前川國男氏の長く使ってもらおうという思いは、良い方向に進んでいただけに残念です。
県民の宮城県美術館の現地存続の活動もあるそうです。
北海道民で、宮城県の事情はわかりませんが、建物だけを見ると、存続していってもらえることを望みます。
梵天丸も、かくありたい
札幌も市民になじみ深い建物が、次々壊されて行ってしまっている現状が。
札幌でも、コンサートなどで使用された「札幌厚生年金会館」などが、ここ近年、壊されて行っています。
前川國男氏と同じ「コルビジェの弟子」の坂倉準三氏が設計の「パークホテル」も建替えされます。
(参照ブログ「札幌のマラソンコースの、近代建築物はオリンピック前に解体されるのか」https://lifehome-sekkei.com/index.php/2020/01/03/olympic/)
老朽化など仕方ない場合もありますが、なるべく馴染み深い、皆の思いが詰まった建物は、残していってもらいたいものです。
日本の建築物や住宅などは、欧米と比べ短命
こちらは、住宅の建て替えのサイクルのデータですが、日本は欧米と比べ、建物は非常に短命です。
物を大事にする文化と思っていた日本の方が「建物は使い捨て」にしているのかもしれません。
設計士は長く使える設計をすることが大切
何故、日本は短命な住宅になっているのかは、次回のブログで書いてゆきたいと思います。
形あるものは、いずれ壊れる運命にはあります。
オーナー様の事情もあるかとも思います。
でも、我々設計士は、短命ではなく、オーナー様が「長い間」幸せに暮らせる「建物」や「住宅」を「残せる」仕事をゆかなければなりませんね。
後記、こちらの建物はその後、解体されずリニューアルことになりました。
良かったですね。
改修工事に伴う休館について – 宮城県美術館 (pref.miyagi.jp)
最後までブログお読みいただきありがとうございました。
皆様の住まいが、より良くなり、楽しく幸せに暮らせますように。
ほかのブログもどうぞ!
札幌で解体されてゆく予定の建築物についてのブログ(北海道民からの反響が大きかったブログです。)
人気のある前川國男氏の自邸のことのブログ
同じ宮城県仙台市にある宮城県図書館のこと
東日本大震災以降の津波対策は
次回のブログもこうご期待!
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東京オリンピックの札幌でのマラソンコース上にある近代建築物が、解体される話のブログ
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ル・コルビジェの西洋美術館のブログ
・ブログを書いている設計士の紹介
田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士
建築設計事務所「ライフホーム設計」代表
*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。
(建築実績100棟以上、現在も月に2,3棟の設計業務に関わる)
貴方の想いをカタチに、一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。
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