こんにちは、1級建築士の設計士の田中です。
好評ブログの「有名な建物を見学しました」の第8回目は「ヨドコウ迎賓館」です。
近代3大建築家で人気のある「フランク・ロイド・ライト」が設計した建物ですが、住宅であるため一般の人でも十分楽しめるかと思います。
目次
1,ヨドコウ迎賓館とは?
2,フランク・ロイド・ライトのデザイン哲学
3,外観の魅力
4,内部の見どころ
5,訪問の際のポイント
6,最後にひとこと
1,ヨドコウ迎賓館とは?
ヨドコウ迎賓館は、兵庫県芦屋市にある迎賓館で、1924年に竣工しました。
元々は山邑太左衛門氏の住宅として建てられましたが、現在は企業(ヨドコウ)の迎賓館として利用されています。
設計は、アメリカの有名な建築家フランク・ロイド・ライトが手掛けています。
2,フランク・ロイド・ライトのデザイン哲学
フランク・ロイド・ライトは、「有機的建築」を提唱し、建物と自然が調和するデザインを追求しました。
「有機的建築」とは、建物と自然が一体となるように設計された建築スタイルのことです。
ヨドコウ迎賓館もその一例で、自然素材をふんだんに使用し、周囲の景観と見事に調和しています。
3,外観の魅力
ヨドコウ迎賓館の外観は、水平ラインを強調したデザインが特徴です。
これは、ライトが大切にしていた「水平の美学」に基づいています。
石造りの壁や木材の使い方が絶妙で、重厚感と温かみが同居しています。
また、各部に施された彫刻や装飾が、建物全体に芸術的な雰囲気を醸し出しています。
(a)装飾が見られるバルコニー
ヨドコウ迎賓館には各階にバルコニーがあり、外部の装飾が見ることができます。
・1階(エントランス)
エントランスにもバルコニーのようなものがあり、芦屋の街が一望できます。
大谷石が絵画の額縁のような役割をしています。
街が切り取られた風景画になるようにデザイン設計したようです。
・最上階のバルコニー
ヨドコウ迎賓館は、高台にあるので芦屋の街が一望できます。
4階部分のバルコニーの出入り口です。
水平ラインがこちらも強調されています。
壁や屋根の軒なども、幾何学模様の大谷石で装飾されています。
どんなところも手を抜かないのが素晴らしいですね。
なんと、3階広間のバルコニーと4階のバルコニーは階段で繋がっています。
大胆な間取り設計です。
3階寝室にもバルコニーがあるのですが、小さな小窓が並んでいるのですがそのすべてに装飾がされています。
・2階の応接室のバルコニー
1階と同様、切り取られたような街が眺望できるバルコニーが応接室にあります。
屋根もついていて、少し高級な感じですね。
(b)エントランス回り
さて1階にもどってきました。
玄関回りも、多くの装飾デザインがされた設計になっています。
玄関前に大谷石で出来た水盤(水ガメ)があります。
かつては石の柱から水が流れていたそうです。
左右対称のデザインもライト設計の特徴です。
・正面玄関のドア
玄関ドアは建物のわりにかなり小さいです。
狭い空間から大きな空間と差をつけて広がりを強調させる手法はライト建築の特徴のひとつです。
幾何学模様にデザインされた狭い柱の間を通って、室内に入ってゆきます。
4,内部の見どころ
館内に入ると、ライトが設計した家具や照明器具が配置されており、彼のデザイン哲学を直接感じることができます。
(a)2階の大広間
特に注目すべきは、大広間の天井です。高い天井に配置されたステンドグラスから差し込む光が、室内を柔らかく包み込みます。
また、小窓は換気の役目も果たしています。
暖かい空気は上に抜けるので、高窓のある部屋は夏の暑い日だと風通しがよくなります。
見学に訪れた日も30度近い湿度の高い日でしたが、かなり涼しく感じられました。
室内のドアなど建築部材だけではなく、照明や家具、暖炉などもライト自身が設計しています。
窓に沿った造り付けの長椅子も、ライト建築の特徴の一つです。
(b)3階和室
当初、和室はなかったのですが、ライトが設計を終えて日本を離れた後、施主の強い要望によって洋室から変更されたと言われています。
和洋折衷のモダンな和室になっています。
和室にも小窓があります。
和室は、西側の長い廊下に面しています。
この廊下が日本家屋によくあった広縁(縁側)の役目を果たしているとも言われています。
ライトは日本の伝統的な建築をかなり勉強されていたといわれています。
・ちょっとお休み、四葉の飾り銅板がモチーフ
ちょっと休憩タイムです。
ヨドコウ迎賓館には四葉の飾り銅板があちこちにあります。
この建物のモチーフになっています。
窓にも装飾されています。
丸い窓が日本家屋にはよくありますが、こちらの設計は斜めの四角い窓になっています。
和室の窓も細部までデザインされています。
和室に面したバルコニーの床にも四葉のモチーフがデザインされています。
幸運のしるし「四葉のクローバー」
(c)4階の食堂
最上階に食堂があります。
天井も高く、明るく開放的な空間になっています。
中央が高くなっている特徴的な部屋です。
装飾性も高く、暖炉の上にも木製の飾りがあります。
5,訪問の際のポイント
・閉館している日も多い
ヨドコウ迎賓館は、閉館している日も多いので、見学訪問を計画する際には公式サイトで確認してから出かけることをお勧めします。
また、館内では写真撮影が許可されていますので、写真もOKです。
ライトは、建物の全ての部分が一体となるように設計しており、その結果、どこをみても細部に至るまで一貫した美しさが感じられます。
そのため、1時間以上は見学の時間はかかるかと思います。
紹介しきれないくらい見学する部屋やポイントがあります。
・豆知識~ヨドコウ迎賓館は国の重要文化財
ヨドコウ迎賓館は、1922年に灘の酒造家・山邑(やまむら)家の別邸として設計されました。
ライトは設計した後、帰国したため、弟子の弟子の遠藤新や南信が引継ぎ1924年に完成されました。
その後、ヨドコウ((株)淀川製作所)が建物を購入し、大正以降の鉄筋コンクリート構造の建物として初めて国の重要文化財に指定されました。
ライトが日本で設計した住宅として、ほぼ完全な形で現存している貴重な建物です。
6,最後にひとこと
ヨドコウ迎賓館は、フランク・ロイド・ライトのデザイン哲学を直接体感できる貴重な場所です。
建築やデザインに興味がある方はもちろん、住宅を建てる際のインスピレーションを得るためにも、一度は訪れていただきたい場所です。
自然と建物が一体となった美しい空間で、素晴らしい時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
・ライトが日本で設計したホテル
・ライトと並ぶ建築家が日本で建築した美術館
・コルビジェの弟子が設計した自邸
・子供のころ、かっこいいなあと思った建物
・ちょっと宣伝(笑)
今回のブログが、みなさまの住まいの参考になりましたなら幸いです。
あなたの住まいがより良くなり、楽しく幸せに暮らせる家が建てられますように。
・ブログを書いている設計士の紹介
田中昭臣(たなかあきおみ)1級建築士、宅地建物取引士
建築設計事務所「ライフホーム設計」代表
*注文住宅の主としたハウスメーカーで設計を経験し独立。
(建築実績100棟以上、現在も月に2,3棟の間取り設計に関わる)
貴方の想いをカタチに、一緒に作る住マイルな住まいを目指しております。
詳しいプロフィールはコチラ
・北海道札幌の設計事務所「ライフホーム設計」のこと
・新築の間取りの設計
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対話を大切し、住みやすい間取りのオシャレなデザイン住宅を作ります。
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